市の広報に載っている人口と、商圏レポートに出てくる人口が合わない。よくある行き違いですが、どちらかが間違っているわけではありません。日本には「その地域の人口」を示す公的な数字が複数あり、作られ方が違うだけです。
この記事では、市区町村の窓口が毎月更新している住民基本台帳人口(住基人口)を取り上げます。国勢調査の人口と何がどう違うのか、実際にどれくらいずれるのかを最新の公表値で突き合わせたうえで、商圏分析ではどちらを使うべきかを整理します。商圏分析全体の流れから確認したい方は商圏分析のやり方 完全ガイドを先にご覧ください。
- 住基人口は住民票に記載されている者の数。実際に住んでいるかを調べた数ではなく、届出の積み上げ
- 全国では住基のほうが多い。令和8年1月1日現在の住基1億2,376万7,642人に対し、令和7年国勢調査の速報値(2025年10月1日現在)は1億2,304万9,524人
- ただし都道府県別で符号が逆転する地域がある。東京都・京都府・宮城県・福岡県では国勢調査のほうが多い(当社が両原典から算出)
- 住基の強みは更新の速さ(毎年1月1日現在・市区町村別)。弱みは属性の少なさで、昼間人口や就業状態は取れない
- 商圏分析の母数は国勢調査が基本。町丁目・メッシュまで下ろせる公的統計が国勢調査だけだから
住民基本台帳人口とは何か
総務省が毎年公表している「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の冒頭に、定義がそのまま書かれています。
「住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)に基づき、令和8年1月1日現在の住民票に記載されている者の数(住民基本台帳人口)及び世帯数並びに令和7年1月1日から令和7年12月31日までの間の人口動態(住民票の記載及び消除の数)についてとりまとめたもの」
ポイントは「住民票に記載されている者の数」という部分です。調査員が家を訪ねて確かめた数ではなく、届出の結果として台帳に載っている数を集計したものです。
そもそも住民基本台帳は統計をつくるための制度ではありません。住民基本台帳法第1条は、この制度の目的を「住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とする」と定めています。人口統計は、その事務処理の副産物として集計されているという位置づけです。
届出のルールも同法にあります。転入届は「転入をした日から十四日以内」(第22条)、転居届も14日以内(第23条)、転出届は「あらかじめ」(第24条)と定められています。裏を返せば、届出が出されなければ台帳は動きません。この一点が、次に見る国勢調査とのずれの主因になります。
なお、令和8年1月1日現在の全国の総計は1億2,376万7,642人(前年から56万3,048人・0.45%の減少)、世帯数は6,174万7,140世帯で1世帯平均構成人員は2.00人です。2013年(平成25年)の調査から外国人住民も対象に含まれており、日本人住民と外国人住民の合計を「総計」として表示しています。
どこで手に入るか
入手経路は3段構えです。粒度によって出どころが変わります。
| 粒度 | 出どころ | 更新 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 全国・都道府県・市区町村 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」 | 年1回(1月1日現在) | 無料 |
| 過去年次 | e-Stat(政府統計の総合窓口) | 同上 | 無料 |
| 町丁目 | 各自治体の公表データ | 自治体による | 無料の例あり |
総務省が公表するのは市区町村までです。政令指定都市は行政区まで分かれています。収録項目は人口(男・女・計)と世帯数のほか、転入者数(国内・国外)、出生者数、転出者数、死亡者数、増減数・増減率、自然増減、社会増減まで含まれており、市区町村単位で「なぜ増えたのか・減ったのか」まで分解できるのが特徴です。
町丁目まで欲しい場合は、自治体側の公表を探すことになります。東京都の場合は「住民基本台帳による東京都の世帯と人口(町丁別・年齢別)」として、第5表「区市町村、町丁別の世帯数及び男女別人口」がExcelとCSVで無料公開されています。令和8年1月分の第4表によると、東京都の町丁数は5,382(うち区部3,142)です。ただし、これは東京都で確認した1件の例であり、すべての自治体が同じ粒度で公表しているとは限りません。住所を座標に直す方法は住所を緯度経度に一括変換する方法で扱っています。
ひとつ注意があります。住民基本台帳法第11条の2は、個人や法人が台帳の一部の写しを閲覧できる場合を「統計調査、世論調査、学術研究その他の調査研究のうち、総務大臣が定める基準に照らして公益性が高いと認められるものの実施」等に限定しています。営業目的の閲覧は列挙されていません。商圏分析のために個票を見に行く運用は想定されていない、と理解しておくのが安全です。
国勢調査となぜ食い違うのか
この問いには、総務省統計局が公式に答えています。国勢調査のQ&A(問1-8)の原文です。
「大都市で若い年齢の人口が住民基本台帳と国勢調査とでは大きな違いとなって現れるなど、住民基本台帳の人口と国勢調査の人口には差があります。これは、住民基本台帳で、住所の変更をせずに転居する人がいるため、住民票の届出場所と実際に住んでいる場所が一致しない場合があるからです。また、両調査における人口の把握時点(1月と10月)や把握方法(届出地と居住地)が異なること、長期の海外渡航者でも住民票を残している場合があることなどによるものです」
整理すると、ずれの理由は3つです。
もうひとつ、商圏分析で効いてくる違いがあります。同じQ&A(問1-6)は、住基から取れる属性の少なさをこう説明しています。
「住民基本台帳には、氏名、出生の年月日、男女の別、住所及び世帯主の氏名と続き柄という限られた人口の属性しか記載されておらず、産業別・職業別の就業者数、昼間の人口と夜間の人口の違いなど、国勢調査で把握される人口の様々な実態に関する統計情報を、住民基本台帳からは得ることはできません」
つまり昼間人口は住基からは原理的に出せません。オフィス街や駅前の立地評価で昼間人口を見たい場合は、国勢調査に頼ることになります。昼夜の差の調べ方は昼間人口と夜間人口の違いと調べ方で解説しています。
実際にどれくらいずれるのか
「違う」とだけ言われても判断に使えないので、公表値どうしを突き合わせてみます。
全国では住基のほうが多くなります。
| 統計 | 時点 | 全国人口 |
|---|---|---|
| 住民基本台帳(総務省) | 2026年1月1日 | 123,767,642人 |
| 国勢調査 人口速報集計(統計局) | 2025年10月1日 | 123,049,524人 |
| 差(住基 − 国勢調査) | +718,118人(+0.58%) | |
ところが都道府県別に見ると、様子が変わります。当社で47都道府県すべてを両原典から算出したところ、国勢調査のほうが多くなるのは4都府県だけでした。
| 都府県 | 国勢調査 − 住基 | 住基比 |
|---|---|---|
| 京都府 | +44,932人 | +1.83% |
| 東京都 | +168,666人 | +1.20% |
| 宮城県 | +18,025人 | +0.82% |
| 福岡県 | +5,023人 | +0.10% |
残る43道府県はすべて住基のほうが多く、差が大きいのは和歌山県(住基比 −2.83%)、香川県(−2.58%)、徳島県(−2.28%)でした。同じ首都圏でも符号が割れます。埼玉県は住基7,368,548人に対し国勢調査7,287,169人、千葉県は住基6,313,748人に対し国勢調査6,258,512人と住基のほうが多く、東京都だけが逆向きです。
この方向は、統計局Q&Aの「大都市で若い年齢の人口が……大きな違いとなって現れる」という記述と整合します。ただし「学生や単身赴任者が住民票を移していないから」という説明は原典には書かれていません。要因の内訳は公表されていないため、ここでは方向が一致するという事実までにとどめます。
実務上の含意はシンプルです。都市部の店舗で住基人口を母数に使うと、実際にそこで生活している人を過小に見積もる可能性があります。逆に地方では住基のほうが多く出ます。円で切った商圏と実際の来店範囲がずれる話は円商圏と実勢商圏はどれだけズレるかで扱っていますが、母数そのものにもこうしたずれがあることは押さえておく価値があります。
3つの人口統計の使い分け
ここまでで2つ出てきましたが、実務で使う人口統計はもう1つあります。統計局の「人口推計」です。
「国勢調査による人口を基に、その後における各月の人口の動きを他の人口関連資料から得て、毎月1日現在の人口を算出しています」
3つを並べると、役割の違いがはっきりします。
| 統計 | 作られ方 | 更新頻度 | いちばん細かい地域 | 属性 |
|---|---|---|---|---|
| 国勢調査 | 全数調査(居住実態) | 5年に1回 | 町丁字・500mメッシュ | 就業・通勤通学など多数 |
| 住民基本台帳 | 届出の集計 | 年1回(月次の移動報告あり) | 市区町村(町丁目は自治体次第) | 男女・年齢・世帯数 |
| 人口推計 | 国勢調査を基に推計 | 毎月 | 都道府県 | 男女・年齢 |
人口推計は最新の月が「概算値」で、5か月後に「確定値」に置き換わります。市区町村別の値はありません。転入・転出の動きを月次で追いたい場合は、統計局の「住民基本台帳人口移動報告」が月次で公表されています(市区町村別は年次)。
推計という点では、将来の人口を出す統計もあります。こちらは将来推計人口とは?市区町村別の調べ方で扱っています。実測(国勢調査)→ 届出(住基)→ 推計(人口推計・将来推計)と並べると、それぞれが何を代表しているのかが整理しやすくなります。
商圏分析でどちらを使うか
結論から言うと、商圏の母数は国勢調査を使います。理由は精度ではなく、粒度です。
見晴が商圏人口の算出に使っているのも国勢調査の500mメッシュ(令和2年・2020年確定値)です。令和7年国勢調査は人口速報集計が2026年5月29日に公表済みですが、表章地域は全国・都道府県・市区町村までで、小地域集計は各集計区分の公表後に順次公表とされています。2026年8月時点で、町丁字・メッシュまで下りられる最新の確定版は令和2年国勢調査です。メッシュ人口の入手手順は国勢調査の500mメッシュ人口を無料で入手する手順にまとめています。
では住基は使わないのかというと、そうではありません。次の3つの場面では住基のほうが向いています。
実務としては、母数は国勢調査で押さえ、直近の勢いは住基で確認するという二段構えが素直です。レポートに書くときは、どちらの統計の何年の値かを必ず添えてください。同じ「人口」でも0.5〜3%程度は平気でずれます。
参考までに、見晴のデモに入っている4店舗で夜間人口を範囲別に出すと、徒歩10分で1.7万人、半径4kmで32.1万人、車15分で37.6万人(2026年7月23日実測・国勢調査500mメッシュの令和2年値による)と、切り方だけで約22倍の開きが出ます。統計の選択によるずれよりも、範囲の切り方によるずれのほうが桁が大きいのが実際のところです。範囲の決め方は商圏調査とは?無料でできる範囲と手順、算出の手順は商圏人口の調べ方。無料で算出する4ステップをご覧ください。無料ツールで自分で触ってみたい場合はjSTAT MAPの使い方とできること・できないことが入口になります。
よくある質問
Q. 住民基本台帳人口はどこで無料で見られますか。
A. 総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」のページで、全国・都道府県別・市区町村別の表がExcelとPDFで公開されています。登録も申請も不要です。過去年次はe-Stat(政府統計の総合窓口)に掲載されています。最新版は令和8年1月1日現在の集計で、2026年7月29日に公表されました。
Q. 住基人口と国勢調査人口はどちらが正しいのですか。
A. どちらも正しく、測っているものが違います。住基は住民票に記載されている者の数(届出地ベース)、国勢調査は実際に住んでいる人を調べた数(居住地ベース)です。総務省統計局は、地域の行政を適切に進めるには実際に住んでいる人・世帯の資料が必要であるとして、生活実態に即した統計としては国勢調査のほうが適しているとしています。商圏分析の母数としても国勢調査が基本になります。
Q. どれくらいずれるのですか。
A. 全国では住基のほうが多く、令和8年1月1日現在の住基1億2,376万7,642人に対し、令和7年国勢調査の速報値(2025年10月1日現在)は1億2,304万9,524人で、差は71万8,118人(0.58%)です。ただし都道府県別では符号が逆転する地域があり、当社が両原典から算出したところ、国勢調査のほうが多いのは京都府・東京都・宮城県・福岡県の4都府県でした。なお両者には3か月の時点差があるため、差のすべてが定義の違いによるものではありません。
Q. 町丁目単位の住基人口は手に入りますか。
A. 総務省の公表は市区町村までです。町丁目単位は各自治体が独自に公表している場合があります。東京都は「住民基本台帳による東京都の世帯と人口(町丁別・年齢別)」として町丁別の世帯数と男女別人口をExcel・CSVで無料公開しており、令和8年1月時点で5,382町丁が収録されています。ただしこれは東京都で確認した例であり、すべての自治体が同じ粒度で公表しているとは限りません。お探しの自治体の統計担当ページをご確認ください。
Q. 住基から昼間人口は分かりますか。
A. 分かりません。総務省統計局は、住民基本台帳には氏名・生年月日・男女の別・住所・世帯主との続き柄という限られた属性しか記載されておらず、産業別・職業別の就業者数や昼間の人口と夜間の人口の違いなどは住民基本台帳からは得られないと明記しています。昼夜間の差を見る場合は国勢調査の従業地・通学地集計を使ってください。
Q. 商圏分析のために住民基本台帳を閲覧できますか。
A. 住民基本台帳法第11条の2は、個人または法人の申出による閲覧を、統計調査・世論調査・学術研究その他の調査研究のうち総務大臣が定める基準に照らして公益性が高いと認められるものの実施等に限定しています。営業目的の閲覧はこの列挙に含まれていません。商圏分析で人口を使う場合は、集計済みで公開されている統計表(総務省の公表資料や国勢調査)を利用してください。