「商圏人口10万人」と言うとき、その10万人はいつの人口でしょうか。オフィス街は昼に人が集まり夜は空になります。住宅地はその逆です。同じ場所でも、昼と夜で「そこにいる人の数」はまったく違う。この当たり前の事実を無視して商圏を測ると、ランチ需要の店を住宅地基準で評価したり、夜営業の店をオフィス人口で評価したりする事故が起きます。
この記事では、昼間人口と夜間人口の定義、国勢調査からの調べ方、そして業態ごとの使い分けを整理します。
夜間人口=そこに住んでいる人(常住人口)、昼間人口=通勤・通学の流出入を加味した昼の人口。どちらも国勢調査から無料で調べられます。住宅立地・生活密着業態は夜間人口、オフィス立地・平日昼需要の業態は昼間人口で商圏を測るのが基本です。
- 夜間人口は国勢調査の基本集計、昼間人口は「従業地・通学地による集計」で公表される
- 昼夜間人口比率(昼間人口÷夜間人口)が100を大きく超える街はオフィス型、下回る街はベッドタウン型
- メッシュ単位の公的な昼間人口は存在しない。細かい昼人口は推定になる(推定と明記して使う)
定義:夜間人口と昼間人口
| 指標 | 定義 | イメージ |
|---|---|---|
| 夜間人口(常住人口) | その地域に住んでいる人の数 | 夜、家に帰ってきた状態の人口 |
| 昼間人口 | 夜間人口 −(通勤・通学で出ていく人)+(通勤・通学で入ってくる人) | 平日の昼、その地域にいる人口 |
| 昼夜間人口比率 | 昼間人口 ÷ 夜間人口 × 100 | 100超=昼に人が集まる街/100未満=ベッドタウン |
注意点が2つあります。第一に、昼間人口の流出入は通勤・通学だけを数えており、買い物客や観光客は含まれません。繁華街の「実感の昼人口」より小さく出ることがあります。第二に、これは平日を想定した統計であり、休日の人出は別物です。
調べ方:どちらも国勢調査で公表されている
夜間人口:国勢調査の人口等基本集計
e-Stat(政府統計の総合窓口)で国勢調査(令和2年/2020年)の人口等基本集計を開けば、市区町村・町丁目単位の常住人口が取れます。より細かく円で切りたい場合は500mメッシュ人口を使います。
昼間人口:「従業地・通学地による人口・就業状態等集計」
同じ国勢調査の中で、通勤・通学の流出入を集計した「従業地・通学地による人口・就業状態等集計」が公表されており、ここに市区町村別の昼間人口と昼夜間人口比率が載っています。e-Statで「従業地 通学地」で検索すると早く着けます。
比率で街のタイプを判定する
出店候補地の市区町村の昼夜間人口比率を見れば、その街が「昼に膨らむ街」か「夜に戻ってくる街」かが1つの数字で分かります。候補地リストに1列足すだけで、立地タイプの誤認をかなり防げます。
業態別・どちらの人口で商圏を測るか
夜間人口で測る業態
スーパー・ドラッグストア・クリニック・薬局・学習塾・美容室・フィットネスなど、生活圏の中でリピート利用される業態。顧客は「住んでいる人」なので、住まいの分布=夜間人口が商圏の実態に近い。
昼間人口も見るべき業態
ランチ営業の飲食・コンビニ・オフィス街のカフェ・平日昼のサービス業など。住んでいる人ではなく「昼にそこにいる人」が顧客なので、夜間人口だけで評価すると需要を大きく見誤る。
実務では「主指標+補助指標」の形にするのがおすすめです。例えば駅前の飲食なら、夜間人口(メッシュ)で住民基盤を測りつつ、駅の乗降客数で昼の人流を補完する、という組み合わせです。
メッシュ単位の昼間人口は「推定」になる
ここが実務のつまずきどころです。昼間人口の公的統計は市区町村単位で、500mメッシュのような細かい単位の昼間人口は国勢調査にはありません。「駅前のこの一角の昼人口」を正確に知る公的データは存在しないのです。
細かい昼人口が必要な場合の選択肢は2つです。
- 有償の人流データ(携帯位置情報ベース)を使う。精度は高いが月額数十万円クラスの契約が多い
- 公的データから推定する。市区町村の昼夜間人口比率を守りながら、駅乗降客数などを重みにして市区町村内の分布を按分する方法。見晴の3Dデジタルツインの昼人口はこの方式で、市区町村合計が公式統計と一致するように制約した推定値です(画面にも「公的統計による近似」と明記しています)
どちらを選ぶにせよ、推定値は推定と明記すること。「昼人口◯人」とだけ書かれた資料は、出典を聞かれた瞬間に信頼を失います。
よくある質問
昼間人口に買い物客は含まれますか?
含まれません。国勢調査の昼間人口は通勤・通学による流出入のみを加味した値です。商業集積の集客力は、駅乗降客数や商業統計など別の指標で補完してください。
休日の人口を知る方法はありますか?
公的統計にはありません。休日の人出は有償の人流データの領域です。公的データだけで判断する場合は、平日=昼間人口・生活基盤=夜間人口という2面で近似するのが現実的です。
昼夜間人口比率はどこまで細かく出ますか?
安定して使えるのは市区町村単位です。東京都特別区のような大きな区では区単位の値が公表されています。