駅前立地の出店を検討するとき、その駅を1日に何人が使っているかは判断の土台になる数字です。ところが「駅名+乗降客数」で検索すると、鉄道会社ごとにバラバラのページ、年度もバラバラのまとめ記事が出てきて、複数駅を比較する表がなかなか作れません。
実は、全国すべての駅の乗降客数を1つのファイルで無料入手できる公的データがあります。国土交通省の国土数値情報「駅別乗降客数データ(S12)」です。この記事では、商圏可視化ツール「見晴」で1都3県1,621駅を実際に集計した経験から、入手手順と、初見では気づけない集計の罠を解説します。
駅の乗降客数は国土数値情報S12(令和6年版)で全国分を無料入手できます。ただしデータは路線ごとに同じ駅が重複計上されているため、そのまま合計すると数字が数倍に膨らみます。駅単位に正しくまとめるには「同一駅グループ内で事業者ごとに最大値→事業者間で合算」の順で集計します。
- S12はGeoJSON同梱・UTF-8で、GISソフトなしでもそのまま扱える
- 最大の罠は路線ごとの重複計上。グループコード単位の集計が必須
- 鉄道会社公式の「乗車人員」(乗車のみ)とは定義が違う。混ぜて比較しない
乗降客数を調べる3つのルート
| ルート | カバー範囲 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 鉄道会社の公式発表 | その会社の駅のみ | 特定1駅を最新値で確認したいとき |
| 自治体・都道府県の統計書 | その地域のみ | 行政資料と揃えたいとき |
| 国土数値情報S12 | 全国・全事業者 | 複数駅の比較・地図での分析 |
複数の駅を横並びで比較したり、地図に重ねて商圏を評価したりするなら、S12一択です。座標(緯度経度)つきなので、そのまま地図に載せられます。
国土数値情報S12のダウンロード手順
国土数値情報ダウンロードサイトで「S12」を探す
国土交通省「国土数値情報ダウンロードサイト」で「駅別乗降客数」を検索します。データ項目コードはS12です。
最新版(令和6年版=S12-24)のzipを取得
全国一括のzipファイル(5〜6MB)をダウンロードします。令和6年版に収録されている最新の実績値は令和5年度(2023年度)の1日平均乗降客数です。「令和6年版だから2024年の数字」ではない点に注意してください。
同梱のGeoJSONを開く
zipにはGML形式に加えてUTF-8のGeoJSONが同梱されています。GISソフトや変換ツールを使わなくても、プログラムやテキストエディタでそのまま読めます。各レコードに駅名・事業者名・路線名・乗降客数・座標が入っています。
最大の罠:路線ごとの重複計上
S12のレコードは「駅」単位ではなく「路線×駅」単位です。つまり、複数路線が乗り入れる駅は同じ駅が複数レコードに分かれ、しかも同一事業者の複数路線に同じ乗降客数が重複して入っているケースがあります。これを知らずに駅名で単純合計すると、大きなターミナル駅ほど数字が実態の数倍に膨らみます。
見晴でこのデータを整備したときに採用した集計ルールは次の通りです。
同一駅グループでまとめる
S12には同じ駅をまとめるためのグループコード(属性S12_001g)があります。まずこのコード単位でレコードを束ねます。
事業者ごとに「最大値」を採る
同一事業者の路線間では同じ数字が重複計上されていることがあるため、合計ではなく最大値を採用します。
事業者間で合算する
JRと私鉄と地下鉄が乗り入れる駅なら、事業者ごとの値を合算して「駅全体の乗降客数」とします。座標は同一グループ内の座標の重心を使うと、地図上の位置が安定します。
この方法で1都3県を集計すると1,621駅になりました(見晴の内蔵データ・令和6年版S12ベース)。集計ロジックを変えると数字そのものが変わるため、資料に載せるときは「S12を駅単位に集計(事業者合算)」のように集計方法まで書いておくと、後から数字を検証できます。
「乗降客数」と「乗車人員」の違い
駅の利用者数には2つの定義が流通しています。
乗降客数(S12はこちら)
乗った人+降りた人の合計。商圏分析では「駅前をその人数が通る」という意味で使いやすい指標です。
乗車人員(JR東日本の公式発表など)
乗った人だけを数えた値。乗降客数のおよそ半分のオーダーになります。S12の数字と混ぜて比較すると2倍近い差が出て見えるので要注意。
商圏分析での使い方
乗降客数は「駅前立地の集客ポテンシャル」の代理指標です。実務では次のような使い方をします。
- 出店候補駅の横並び比較:候補地リストに乗降客数の列を足すだけで、駅格の序列が客観化されます
- 商圏内の駅パワー合算:店舗の商圏円・到達圏に含まれる駅の乗降客数を合算し、夜間人口だけでは見えない「昼の人の流れ」を補完します
- 広告配信エリアの優先順位づけ:同じ予算なら、乗降客数の大きい駅を含むエリアから検証する、といった優先順位の根拠になります
ただし乗降客数は「改札を通った人数」であり、駅前に滞留する人数でも、あなたの店の前を通る人数でもありません。夜間人口(国勢調査メッシュ)と組み合わせて、昼と夜の両面で商圏を見るのが基本です。
よくある質問
最新年度の数字が欲しいときは?
S12は年版更新のため、直近年度の値は各鉄道会社の公式発表のほうが早く出ます。ただし定義(乗車人員か乗降客数か)が違うため、S12の表に1駅だけ公式値を混ぜるのは避け、注記つきで別欄にするのが安全です。
バスやロープウェイの乗降客数もありますか?
S12は鉄道駅が対象です。バス利用者数は事業者・自治体単位の公表になり、全国一括の同等データはありません。
乗降客数が空欄・非公表の駅があるのはなぜ?
事業者が非公表としている駅などはデータが入っていないことがあります。空欄を0として合算しないよう注意してください。