「このエリア、これから人が増えるのか」を出店の前に知りたい。国勢調査は5年に1回で、次の調査を待っている余裕はない。住民基本台帳は今いる人の数であって、これから来る人の数ではない。そこで住宅の着工数を見よう、と考えたところでこの記事にたどり着いた方が多いと思います。

結論から書くと、新設住宅着工戸数は市区町村別に、しかも毎月公表されています。町や村まで入っています。にもかかわらず商圏分析で使われることが少ないのは、国土交通省が用意している見やすい時系列表のほうには都道府県別までしか置かれていないためです。この記事では、実際に町村まで入った表を取得して中身を数え、何が読めて何が読めないのかを整理します。商圏分析の全体像から確認したい方は商圏分析のやり方 完全ガイドを先にご覧ください。

結論

住宅着工統計の第18表(Excel)に、市区町村別・持家/貸家/給与住宅/分譲住宅の内訳つきの新設住宅着工戸数が毎月載っています。実際に令和8年6月分を取得したところ、12シート・2,290の地域ラベル(うち町村が932)が収録されていました。人の動きを見る住民基本台帳人口移動報告は市区町村別が年1回しか出ないので、「どこに住宅が増えているか」は「どこに人が移ったか」より約11か月早く分かります。ただし単位は「棟」ではなく「戸」で、マンション1件で数字が跳ねます。

この記事の要点
  • この統計は調査員が数えたものではなく、建築基準法第15条第1項の建築工事届を集計したもの。だから床面積の合計が10平方メートル以内のものは制度上入らない
  • 「着工」は工事が始まった事実ではない。届出を受理した(または確認済証を交付した)時点で発生し、計上される月は届出書に書かれた着工予定期日の月
  • 市区町村別は毎月公表される。令和8年6月分の第18表は5.4MB・12シート・地域ラベル2,290件で、「01303当別町」から「47382与那国町」まで収録されていた
  • ただしその月次の市区町村データはe-StatのデータベースやAPIには載っていない。e-Stat自身が「エクセル表をご利用ください」と告知している(2026年8月19日時点)
  • 単位は「戸」。公式定義は「居室、台所など独立して居住できるように設備された一棟又は区画されたその一部」なので、マンション1棟が数百戸として1か月に計上される

着工統計は「調査」ではなく届出の集計

最初に押さえておきたいのは、この統計の成り立ちです。政府統計ポータルサイト e-Stat の説明にはこう書かれています。

建築着工統計調査は、建築基準法第15条第1項の規定により届出が義務づけられている建築物を対象とする統計調査で、毎月調査結果を公表しています。

その建築基準法第15条第1項の条文が次のとおりです。

建築主が建築物を建築しようとする場合又は建築物の除却の工事を施工する者が建築物を除却しようとする場合においては、これらの者は、建築主事等(中略)を経由して、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。ただし、当該建築物又は当該工事に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内である場合においては、この限りでない。

同条第4項では「都道府県知事は、前三項の規定による届出及び報告に基づき、建築統計を作成し、これを国土交通大臣に送付し」と定めています。つまりこの統計は、建築確認まわりの事務で必ず発生する書類を積み上げたものです。統計法上の位置づけも明確で、建築動態統計調査規則の第一条は「統計法(平成十九年法律第五十三号)第二条第四項に規定する基幹統計である建築着工統計を作成するための調査」と書いています。

この成り立ちから、実務上の注意が2つ出てきます。1つは、10平方メートル以内のものは統計に入らないということ。国土交通省の用語の定義でも「10㎡以下の建築物は統計から除外されているため、実際に着工されている建築物の量は統計に表れた数字より多いと見なければならない。」と明記されています。もう1つは、届出が出れば数えられるということです。届出のあと計画が止まっても、統計から取り消されるわけではありません。

「着工」はいつの時点を数えているのか

ここは誤解が多いところです。「着工」という言葉から、重機が入って工事が始まった時点を数えていると考えたくなりますが、そうではありません。建築動態統計調査規則の第五条にこうあります。

建築物着工統計調査及び住宅着工統計調査は、法第十五条第一項の規定による建築物を建築しようとする旨の届出を受理したとき(中略)に行う。

さらに、どの月に計上されるかは第七条が決めています。

都道府県知事は(中略)調査票を当該届出に係る建築基準法施行規則(中略)別記第四十号様式に記載された着工予定期日(以下単に「着工予定期日」という。)の属する月ごとに作成し、これを翌月十三日までに到達するよう国土交通大臣に送付しなければならない。

計上される月は「着工予定期日」の月です。建築主が届出書に書いた予定の日であって、実際に着工した日ではありません。工事が予定どおり始まったかどうかを統計は追いかけていません。

もう1つ、金額と面積の計上方法にも癖があります。用語の定義には「この統計では、建築物の床面積や工事費予定額は着工月に全額計上される。」とあります。工期が2年のマンションでも、床面積は着工月に丸ごと立ちます。

この「予定期日で計上する」仕組みは、悪いことばかりではありません。同じ用語の定義には「調査対象の翌月末には結果が判明し、悉皆調査としては極めて高い速報性がある。」とあります。全数を数えながら翌月末に出せるのは、着工の事実確認を待たずに届出だけで走らせているからです。速さと引き換えに、予定と実績のずれを飲んでいる統計だと理解しておくのが正確です。

市区町村別は毎月出ている(実測)

ここが本題です。国土交通省の「建築着工統計調査報告 時系列一覧」のページには、月報として次のExcelが並んでいます(令和8年6月分・令和8年7月31日更新の時点)。

ファイル名地域の細かさ
【住宅】都道府県別着工戸数都道府県まで
【住宅】都道府県別床面積都道府県まで
【建築物】都道府県別床面積都道府県まで
【住宅】構造別着工戸数/プレハブ, ツーバイフォー全国のみ

このページだけを見ると「都道府県別までしか無い」と結論してしまいます。実際には、e-Stat 側にもっと細かい表があります。e-Stat の統計の説明文にはこう書かれています。

建築着工統計調査では、建築物の着工状況について建築主別の建築物の数、床面積の合計、工事費予定額などの結果を、全国、都道府県、市区町村の地域で提供しています。

そこで、住宅着工統計の第18表(令和8年6月分)のExcelを実際にダウンロードして中身を数えました。結果は次のとおりです。

項目実測値(令和8年6月分)
表題着工新設住宅:利用関係別、構造別、建て方別(戸数、床面積の合計)
ファイルサイズ5,443,584 バイト(約5.4MB)
シート数12
地域ラベルの数2,290
うち町村932
先頭の地域01000北海道
末尾の地域47382与那国町
各地域の行構成計/持家/貸家/給与住宅/分譲住宅

「01303当別町」「01304新篠津村」といった町村がそのまま並んでいます。1つの町・村の、1か月の、持家と貸家と分譲住宅の内訳が取れるということです。全国計は 66,344戸・5,051,697平方メートル、内訳は持家18,553戸・貸家30,253戸・給与住宅327戸・分譲住宅17,211戸でした。

注意点が1つあります。この月次の市区町村データは、e-Stat のデータベース(API経由で取れる形)には載っていません。e-Stat の統計説明に「※「住宅着工統計」17表、18表のDBにつきまして、ただいまデータ内容を確認中です。恐れ入りますが、エクセル表をご利用ください。」という告知が出ています(2026年8月19日に確認)。自動で取り込む仕組みを作りたい場合も、当面はExcelをダウンロードする経路になります。

人の統計より11か月早い

市区町村単位で「これからどうなるか」を見たいとき、比較対象になるのは住民基本台帳です。総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告のよくある質問には、次のように書かれています。

3 結果はいつごろ公表されるのですか? 月次結果は、原則として、翌月下旬に公表することとしています。

4 市区町村別の結果はいつごろ公表されるのですか? 市区町村別の結果は、4月下旬に公表することとしています。

人の移動は、市区町村別だと年に1回しか出ません。月次で出ているのは都道府県単位までです。一方、住宅の着工は市区町村別が毎月出ます。

見たいもの統計市区町村別の公表頻度
これから住む器の数住宅着工統計(第17表・第18表)毎月(翌月末)
実際に移った人の数住民基本台帳人口移動報告年1回(4月下旬)
今いる人の数住民基本台帳に基づく人口年1回
5年ごとの詳細国勢調査5年に1回

出店の意思決定という場面では、この差が効きます。住民基本台帳の人口将来推計人口で「増えている・減っている」の大枠をつかみ、直近の動きは着工で補う、という組み合わせが素直です。

ただし、着工は人口そのものではありません。戸数に世帯人員を掛ければ人数になりますが、その世帯人員は着工統計には入っていません。「1戸=2.2人」といった換算をするなら、その係数の出所を別に示す必要があります。あくまで「器がどれだけ増えたか」の指標として扱うのが安全です。

単位は「戸」。だから1件で跳ねる

市区町村・月次という細かい単位で見るときに、いちばん引っかかるのがここです。国土交通省の用語の定義には次のように書かれています。

「戸」とは、居室、台所など独立して居住できるように設備された一棟又は区画されたその一部をいう。従って、アパートやマンションは、一棟一戸ではなく、一棟の中にいくつかの「戸」が存在することになる。

つまり、200戸のマンション1件で、その市の1か月の数字が200戸増えます。年間で見れば均されますが、月次・市区町村という単位ではひとつの案件が地形を変えます。前年同月比が3倍になっていても、それはマンション1件かもしれません。

この跳ね方を切り分けるために、同じ用語の定義にある「マンション建築戸数」の定義が使えます。

マンションの定義は、鉄骨、鉄筋造の共同住宅で分譲されるものがほぼ該当するため、この統計では、利用関係別(分譲住宅)で構造別(鉄骨鉄筋コンクリート+鉄筋コンクリート+鉄骨)+建て方別(共同住宅)の総計をマンション建築戸数として公表している。

第18表は利用関係・構造・建て方の3つで割った表なので、この定義どおりの絞り込みが同じ表の中でできます。マンション分を外した数字と、入れた数字の両方を並べて見ると、そのエリアの動きが単発の大型案件によるものか、じわじわとした増加なのかが判別できます。

持家・貸家・分譲の内訳をどう読むか

利用関係の4区分は、国土交通省の用語の定義にそのまま載っています。

区分公式の定義(原文)
持家建築主(個人)が自分で居住する目的で建築するもの。
貸家建築主が賃貸する目的で建築するもの。
給与住宅会社、官公署、学校等がその社員、職員、教員等を居住させる目的で建築するもの。
分譲住宅建て売り又は分譲の目的で建築するもの。

商圏の性格を読むうえで、この4区分は素材として優秀です。同じ「住宅が増えている」でも、中身が違えば入ってくる人が違うためです。

1
持家が増えている

土地を買って建てる層です。すでに世帯が形成されていて、定着する前提で動いています。長い目で見た商圏の底上げになりますが、増え方はゆるやかです。フランチャイズの出店立地を検討するなら、数年単位のトレンドとして見る指標です。

2
貸家が増えている

入れ替わりのある層です。令和8年6月分の全国計では、貸家30,253戸が持家18,553戸を上回っていました。単身・小世帯の比率が高くなりやすく、コンビニの商圏のような日常利用の業態には効きますが、定着率は低めに見ておくのが無難です。

3
分譲住宅が増えている

建て売りと分譲マンションです。まとまった数が一度に入ります。入居は着工の1〜2年後になるため、いま数字が立っている場所は「2年後に人が増える場所」です。逆に言えば、2年後に競合が出店してくる場所でもあります。

なお給与住宅は全国計で327戸(令和8年6月分)と桁がひとつ以上小さく、市区町村単位ではほとんどの月がゼロです。実務では持家・貸家・分譲の3つを見れば足ります。

実際の取り方(3ステップ)

1
e-Stat で「建築着工統計調査」を開く

政府統計コードは 00600120 です。提供統計は「建築物着工統計」と「住宅着工統計」に分かれており、戸数が欲しい場合は住宅着工統計のほうを開きます。国土交通省の時系列一覧ページからではなく、e-Stat 側から入るのが要点です。

2
第17表または第18表のExcelを取る

市区町村(町村を含む)まで入っているのはこの2表です。第17表は利用関係別・資金別・建て方別、第18表は利用関係別・構造別・建て方別です。構造で絞ってマンション分を分離したいなら第18表を選びます。1か月分で約5MBあり、シートが12枚に分かれているので、都道府県をまたいで集計するときはシートの結合が必要です。

3
12か月ぶんを足して年計にする

月次のまま市区町村を見ると、案件の有無で0と数百を行き来します。12か月の移動合計にしてから前年と比べると、単発案件の影響が薄まります。年次であればデータベース(API)でも取れるので、過去の趨勢だけなら年次で足ります。統計ダッシュボードの使い方も合わせてご覧ください。

最後に、この統計だけで商圏を決めないことをおすすめします。着工は「器が増えた」ことしか示しません。その器に誰が入るのか、どこから買い物に来るのかは、商圏人口実勢商圏の側で確かめる必要があります。着工は、そこに「これから変わる」という時間軸を1本足すための材料です。

よくある質問

新設住宅着工戸数は市区町村別に取れますか?

取れます。住宅着工統計の第17表・第18表のExcelに、政令市の行政区・町・村まで含む市区町村別の戸数が収録されています。令和8年6月分の第18表を実際に取得したところ、12シート・地域ラベル2,290件(うち町村932件)で、「01303当別町」から「47382与那国町」まで並んでいました。国土交通省の「建築着工統計調査報告 時系列一覧」ページに置かれているExcelは都道府県別までなので、そちらだけを見ると見つかりません。

いつ公表されますか?

月次は翌月末です。建築動態統計調査規則 第十一条が「国土交通大臣は(中略)毎月分について全国の集計を翌月末日までに行い、その集計結果を、速やかに公表する」と定めています。国土交通省の時系列一覧ページでも、令和8年6月分の更新日が令和8年7月31日と表示されていました(2026年8月19日確認)。年計は翌年1月末、年度計は翌年度4月末に更新されています。

「着工」は工事が始まった日のことですか?

違います。建築動態統計調査規則 第五条により、建築基準法第15条第1項の届出を受理したとき(または確認済証を交付したとき)に調査を行います。そして第七条により、調査票は届出書に記載された「着工予定期日」の属する月ごとに作られます。計上される月は予定の日であって、実際に工事が始まった日ではありません。予定どおり着工したかどうかは統計上追跡されません。

小さな建物は含まれていますか?

含まれていません。建築基準法第15条第1項のただし書が「当該建築物又は当該工事に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内である場合においては、この限りでない」と定めており、そもそも届出義務がありません。国土交通省も用語の定義で「10㎡以下の建築物は統計から除外されているため、実際に着工されている建築物の量は統計に表れた数字より多いと見なければならない」と明記しています。

e-Stat の API で市区町村別の月次データを取れますか?

2026年8月19日時点では取れません。e-Stat の統計説明に「※「住宅着工統計」17表、18表のDBにつきまして、ただいまデータ内容を確認中です。恐れ入りますが、エクセル表をご利用ください。」という告知が出ています。市区町村別の月次が必要な場合は、Excelファイルをダウンロードする経路になります。

「戸」と「棟」は何が違いますか?

「戸」は住戸の数です。国土交通省の用語の定義では「居室、台所など独立して居住できるように設備された一棟又は区画されたその一部」とされており、「従って、アパートやマンションは、一棟一戸ではなく、一棟の中にいくつかの「戸」が存在することになる」と補足されています。市区町村・月次という細かい単位で見ると、共同住宅1件で数字が大きく動くことに注意してください。

マンション分だけを分けて見られますか?

第18表なら同じ表の中で絞り込めます。国土交通省は「マンション建築戸数」を、利用関係別(分譲住宅)×構造別(鉄骨鉄筋コンクリート+鉄筋コンクリート+鉄骨)×建て方別(共同住宅)の総計として公表しており、第18表はこの3軸をすべて持っています。マンション分を含む数字と外した数字を並べると、単発の大型案件による跳ねかどうかが判別できます。

持家・貸家・給与住宅・分譲住宅の違いは何ですか?

国土交通省の用語の定義では、持家は「建築主(個人)が自分で居住する目的で建築するもの」、貸家は「建築主が賃貸する目的で建築するもの」、給与住宅は「会社、官公署、学校等がその社員、職員、教員等を居住させる目的で建築するもの」、分譲住宅は「建て売り又は分譲の目的で建築するもの」とされています。市区町村別の表にもこの4区分がそのまま入っているので、同じ粒度で比べられます。

着工戸数から商圏人口の増加分を計算できますか?

そのままではできません。着工統計は戸数と床面積までで、1戸あたりの世帯人員は含まれていないためです。人数に換算するには別の統計から係数を持ってくる必要があり、その係数の出所を明示しないと推定の根拠が曖昧になります。「器がどれだけ増えたか」の指標として扱い、人数は商圏人口の側で押さえるのが確実です。

出典:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第15条、建築動態統計調査規則(昭和二十五年建設省令第四十四号)第一条・第三条・第四条・第五条・第七条・第十一条(いずれもe-Gov法令検索の法令APIから現行版を取得)/国土交通省「建築着工統計調査 用語の定義」(kentyasetumei8.pdf・全14ページ)/国土交通省「建築着工統計調査報告 時系列一覧」/政府統計の総合窓口 e-Stat「建築着工統計調査」(政府統計コード 00600120)および住宅着工統計 第18表 令和8年6月分Excel(5,443,584バイト・12シート)/総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 よくある質問」。いずれも2026年8月19日に取得し、PDFとExcelは中身を開いて数えたうえで記載しています。数値・公表予定・提供形態は更新されるため、必ず原典をご確認ください。