出店の資料で住宅の話が出てくるのは、たいてい後半です。人口と世帯数を並べ、競合を置き、最後に「この地域は持ち家が多い」「空き家が目立つ」といった一文が付きます。その一文の出どころを聞かれて答えられないことが少なくありません。

住宅の実態を全国同じ定義で調べている調査は1つあります。総務省統計局の住宅・土地統計調査です。昭和23年から5年ごとに続いており、令和5年調査で16回目になります。空き家率も持ち家住宅率も、報道で見る数字はほぼこの調査のものです。

ただしこの調査は、人口や世帯数の統計と使い方の作法が違います。全数調査ではありませんし、市区町村より細かい地域は出てきません。この記事では、令和5年調査の数字と統計局の注意書きをそのまま引きながら、商圏の資料でどこまで使えるのかを整理します。商圏データの集め方から出店判断までの全体像は商圏分析のやり方 完全ガイドにまとめています。

結論

使えるのは市区町村までで、しかも人口1万5千人未満の町村は表章されません。標本調査なので数値には誤差が含まれ、推定値が小さいほど誤差の割合が大きくなります。市区町村を横並びで比べる指標としては使えますが、1つの候補地の需要を戸数で積み上げる用途には向きません。令和5年調査の空き家率は13.8%、持ち家住宅率は60.9%です。

この記事の要点
  • 昭和23年以来5年ごと、令和5年調査で16回目。統計法に基づく基幹統計調査。調査期日は2023年10月1日午前零時現在
  • 令和5年の総住宅数は6504万7千戸(2018年比4.2%増)。空き家は900万2千戸・空き家率13.8%で過去最高、持ち家住宅率は60.9%
  • 市区町村の結果は「市区及び人口1万5千人以上の町村」だけ。小さい町村は市区町村単位でも数字が出ない
  • 標本調査。対象は計約340万住戸・世帯で、令和2年国勢調査調査区から約20万調査区を抽出している
  • 標準誤差率は推定値100万で0.694%だが、推定値1000では22.105%(全国・甲乙両調査票)。小さい数字ほど割合として大きく振れる
  • 速報集計と確報集計で19都府県の空き家率が変わった。資料には速報か確報かと取得日を書く

住宅・土地統計調査は何を調べている調査か

統計局は調査の目的をこう書いています。「住宅・土地統計調査は、我が国における住宅及び住宅以外で人が居住する建物に関する実態並びに現住居以外の住宅及び土地の保有状況その他の住宅等に居住している世帯に関する実態を調査し、その現状と推移を全国及び地域別に明らかにすることにより、住生活関連諸施策の基礎資料を得ることを目的としています。

沿革についても明記があります。「住宅・土地統計調査は昭和23年以来5年ごとに実施しており、令和5年住宅・土地統計調査はその16回目に当たります。」。統計法(平成19年法律第53号)に基づく基幹統計調査で、根拠規則は住宅・土地統計調査規則(昭和57年総理府令第41号)です。

調査事項は住宅そのものだけではありません。世帯の年間収入、家計を主に支える世帯員の通勤時間、現住居に入居した時期、住宅の建築時期・床面積・構造、家賃または間代、耐震に関する事項、そして現住居以外の住宅と土地の保有状況までが含まれます。「その家に、どういう世帯が、どういう条件で住んでいるか」が1つの調査でつながっているのが、この調査の特徴です。

令和5年調査については、統計局は「空き家対策の重要性が年々高まっていることを踏まえ、引き続き、空き家の所有状況などを把握するとともに、超高齢社会を迎えている我が国における高齢者の住まい方をより的確に把握することを主なねらいとしています。」としています。

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 調査の概要」「同 調査の結果」「同 統計表利用上の注意」「同 標本抽出方法及び結果の推定方法 表1 推定値の大きさ別標準誤差率-全国」「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果 結果の概要」(令和6年9月25日公表)。2026年9月4日に取得しました。強調は編集部によるものです。

商圏の資料に使える3つの指標

調査事項は幅広いのですが、出店の資料で実際に効いてくるのは次の3つです。いずれも令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の数値で、2023年10月1日現在のものです。

指標全国の値(2023年)資料での使いどころ
空き家率13.8%(空き家900万2千戸)地域の需要の細り方。過去最高で、2018年の13.6%から0.2ポイント上昇
持ち家住宅率60.9%(持ち家3387万6千戸)居住の定着度。借家は1946万2千戸で35.0%
住宅の建て方一戸建52.7%/共同住宅44.9%訪問・ポスティング・地上戦の設計。共同住宅は過去最高の割合

空き家率については、内訳の見方に注意が必要です。統計局は「空き家数のうち、『賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家』は385万6千戸と、2018年と比べ、36万9千戸の増加となっており、総住宅数に占める割合は5.9%となっている。」としています。報道でよく見る13.8%には、賃貸募集中の部屋や別荘が含まれています。「使われていない家が13.8%ある」という読み方は正確ではありません。人が住む見込みが立っていない住宅に絞ると5.9%です。

持ち家住宅率は、統計局が「1993年から2023年までの30年間における持ち家住宅率の推移をみると、60%前後でほぼ横ばいとなっている。」としているとおり、全国では動きの小さい指標です。時系列で追うより、市区町村の横並びで差を見る指標として使うほうが実用的です。借家の内訳は民営借家が1568万4千戸(28.2%)、公営の借家が176万戸(3.2%)、給与住宅が130万2千戸(2.3%)、都市再生機構(UR)・公社の借家が71万6千戸(1.3%)です。

建て方は地域差が最も出る項目です。統計局は「住宅に占める共同住宅の割合を都道府県別にみると、東京都が71.6%と最も高く」としています。全国平均は44.9%で東京都は71.6%ですから、チラシの配り方や店前の導線の考え方は同じにできません。町丁目の人口を見て人数だけで判断すると、この差が資料から消えます。

人口1万5千人未満の町村は出てこない

ここがこの調査で最も間違えやすい点です。統計表利用上の注意には、次の一文があります。

市区町村の結果については、市区及び人口1万5千人以上の町村を表章の対象とした(人口は令和2年国勢調査時点)。

2つのことが書かれています。1つは市区町村より細かい単位が無いこと。国勢調査のように町丁・字別の集計はありません。もう1つは、人口1万5千人未満の町村は市区町村としても表章されないことです。基準になる人口は令和2年国勢調査時点のものです。

郊外や地方の候補地を検討していると、この2つ目にぶつかります。候補地の町村が表に載っていないのは、データが取れなかったからではなく、最初から表章の対象外だからです。e-Statで探し続けても出てきません。

載っていない町村をどう扱うか

周辺の市区の値で代用する、あるいは都道府県の値を参照する、という2通りがあります。どちらの場合も「当該町村の値ではない」と資料に明記してください。空き家率は都道府県内でも差が大きい指標なので、代用値を町村の実数のように書くと、後で説明できなくなります。小地域の人口や世帯数が必要なら、国勢調査の世帯数500mメッシュ人口の側で押さえます。

丸めの規則も統計表利用上の注意に書かれています。「市区町村(21大都市を含まない)は、1位を四捨五入して10位までを有効数字として表章」。市区町村の戸数は10戸単位でしか出ていません。1戸単位の精度がある数字として扱わないでください。全国・都道府県・21大都市などは「10位を四捨五入して100位までを有効数字として表章」です。

全数調査ではなく標本調査

国勢調査と同じ感覚で扱えない最大の理由がここです。調査の概要は対象をこう書いています。

調査期日において調査単位区内から抽出した住宅及び住宅以外で人が居住する建物並びにこれらに居住している世帯(1調査単位区当たり17住戸、計約340万住戸・世帯)を対象としました。

抽出の方法も公開されています。令和2年国勢調査調査区から刑務所・拘置所のある区域、自衛隊区域、駐留軍区域及び水面調査区を除いて層化し、市区町村別に必要な調査区数を算定したうえで約20万調査区を抽出。さらにそこから系統的に抽出した約3万調査区が調査票乙の対象で、こちらは計約50万住戸・世帯です。

調査事項の一部は調査票乙でしか聞いていません。現住居以外の住宅の所在地・建て方・取得方法・建築時期・居住世帯のない期間、現住居以外の土地の所在地や面積などがそれに当たります。統計表利用上の注意は「表題に使用されている<乙>印は調査票乙のみを用いて集計した統計表である。」とし、丸めも「<乙>は、100位を四捨五入して1000位までを有効数字として表章」と別扱いにしています。乙印の表は1000戸単位です。

そして統計表利用上の注意には、はっきりこう書かれています。「本調査は標本調査であるため、統計表の数値は標本誤差を含んでいる。」。jSTAT MAP家計調査と同じ画面に並べても、この調査の数字だけは性質が違うということです。

小さい数字ほど誤差の割合が大きい

誤差の大きさは統計局が表で公開しています。「表1 推定値の大きさ別標準誤差率-全国」の甲・乙両調査票で集計した結果から、代表的な行を抜き出します。

推定値の大きさ標準誤差標準誤差率
3000万28,1510.094%
100万6,9370.694%
10万2,2092.209%
1万6996.990%
300038312.762%
100022122.105%

読み方はこうです。推定値が1000戸のとき、標準誤差率は22.105%。100万戸のときの0.694%と比べると、割合として30倍以上振れます。これは全国の表なので市区町村の値そのものではありませんが、「数が小さいほど比率としての誤差が大きくなる」という向きは変わりません。

実務での意味は明確です。市区町村単位で「空き家率が15.2%と14.8%だからこちらが有利」という比べ方はできません。比率としての差が誤差に埋もれる可能性があります。一方で「20%台と10%台」のような水準の違いなら、判断材料として成立します。

もう1つ、統計表利用上の注意には「統計表の数値は、総数に『不詳』の数を含むことから、総数と内訳の合計は必ずしも一致しない。」ともあります。内訳を足して総数と合わないときに、転記ミスを疑う前にこの規定を思い出してください。

速報値と確報値で数字が動いた19都府県

令和5年調査の公表は段階的に行われました。

集計公表日内容
住宅数概数集計(速報集計)令和6年4月30日全国・都道府県の総住宅数、空き家数など
住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)令和6年9月25日総住宅数、空き家数ほか基本的な項目
住宅の構造等に関する集計(確報集計)令和7年1月29日住宅の構造・設備・工事など
土地集計(確報集計)令和7年3月26日世帯の土地の保有状況
主要統計表及び時系列統計表令和7年9月30日時系列で並べた表

統計局のQ&Aは、速報と確報の関係についてこう書いています。「47都道府県中、以下に示す19の都府県において空き家率が変わっています。」。変化幅は多くが0.1ポイントで、最も大きいのが滋賀県の12.1%から12.3%(0.2ポイント)です。東京都は11.0%から10.9%、大阪府は14.3%から14.2%に変わっています。

速報の時点で資料に載せた数字が、5か月後には別の値になっていたということです。統計局自身も「住宅及び世帯に関する基本集計等の確定値は、住宅数概数集計の数値とは必ずしも一致しません。」と明記しています。資料には数値だけでなく、どの集計のいつ時点の値かを併記するのが安全です。新設住宅着工戸数のような月次で出る統計と並べるときは、なおさら年次のずれが分かる形にしておきます。

出店の資料でどう使うか

ここまでを踏まえると、住宅・土地統計調査の使いどころは絞られます。

  • 候補地を市区町村単位で横並びにするとき。空き家率・持ち家住宅率・共同住宅の割合を同じ年次で並べる
  • 水準の違いを見るとき。20%台か10%台か、といった桁で意味が変わる比較
  • 販促の設計を変える根拠にするとき。共同住宅が多い地域と一戸建が多い地域で、接点の作り方を分ける

逆に向かないのは次の使い方です。

  • 徒歩10分圏や半径1kmといった商圏単位の戸数を出す。市区町村より細かい単位が無いため、按分すると根拠が消えます
  • 小数点以下の差で候補地に順位を付ける。標本誤差の範囲に収まる差である可能性があります
  • 人口1万5千人未満の町村の実数として引く。そもそも表章されていません

商圏の需要そのものは、人口と世帯数の側で積み上げるのが基本です。国勢調査の世帯数で世帯の数を押さえ、家計調査で1世帯当たりの支出を掛け、将来推計人口で先の細り方を見る。住宅・土地統計調査は、その積み上げに「どういう住まい方の地域か」という色を付ける役回りだと考えると、扱いを間違えにくくなります。

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 調査の概要」「同 調査の結果」「同 統計表利用上の注意」「同 標本抽出方法及び結果の推定方法 表1 推定値の大きさ別標準誤差率-全国」「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果 結果の概要」(令和6年9月25日公表)。2026年9月4日に取得しました。強調は編集部によるものです。 統計表は政府統計の総合窓口(e-Stat)から取得できます。

よくある質問

Q. 住宅・土地統計調査は何年ごとに行われますか。
A. 5年ごとです。統計局は「住宅・土地統計調査は昭和23年以来5年ごとに実施しており、令和5年住宅・土地統計調査はその16回目に当たります。」としています。統計法(平成19年法律第53号)に基づく基幹統計調査で、住宅・土地統計調査規則(昭和57年総理府令第41号)に基づいて実施されています。最新は令和5年(2023年)10月1日午前零時現在の調査です。次回は令和10年(2028年)の予定になります。

Q. 最新の空き家率と持ち家住宅率はいくつですか。
A. 令和5年住宅・土地統計調査の確報集計によると、空き家は900万2千戸で空き家率は13.8%、2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇して過去最高です。持ち家は3387万6千戸で持ち家住宅率は60.9%、2018年と比べ0.3ポイントの低下です。総住宅数は6504万7千戸で、2018年から4.2%(263万戸)の増加となっています。いずれも2023年10月1日現在の数値です。

Q. 町丁目や小地域の空き家率は出ますか。
A. 出ません。統計表利用上の注意は「市区町村の結果については、市区及び人口1万5千人以上の町村を表章の対象とした(人口は令和2年国勢調査時点)。」としています。市区町村より下の単位は表章されず、さらに人口1万5千人未満の町村は市区町村としても表章されません。小地域の人口や世帯数が必要なときは国勢調査の小地域集計を使います。

Q. この調査の数字は全数調査の数字ですか。
A. 違います。標本調査です。調査の概要は「調査期日において調査単位区内から抽出した住宅及び住宅以外で人が居住する建物並びにこれらに居住している世帯(1調査単位区当たり17住戸、計約340万住戸・世帯)を対象としました。」としています。抽出は令和2年国勢調査調査区から約20万調査区を抽出する方法によっています。統計表利用上の注意も「本調査は標本調査であるため、統計表の数値は標本誤差を含んでいる。」と明記しています。

Q. 小さい数字をそのまま使ってよいですか。
A. 推定値が小さいほど誤差の割合が大きくなります。統計局の「表1 推定値の大きさ別標準誤差率-全国」(甲・乙両調査票で集計した結果)では、推定値100万に対する標準誤差率が0.694%であるのに対し、推定値1万では6.990%、推定値1000では22.105%です。全国の表なので市区町村の値そのものではありませんが、数百戸から数千戸という規模の数字を、そのまま1戸単位で比較する使い方には向きません。

Q. 速報値と確報値で数字は変わりますか。
A. 変わることがあります。令和5年調査では、住宅数概数集計(速報集計)が令和6年4月30日、住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)が令和6年9月25日に公表されました。統計局のQ&Aは「47都道府県中、以下に示す19の都府県において空き家率が変わっています。」としており、変化幅は多くが0.1ポイント、最大は滋賀県の12.1%から12.3%への0.2ポイントです。資料に載せるときは、速報か確報かと取得日を併記してください。