出店候補地の資料をつくるとき、多くの人がまず人口を並べます。ところが、家計調査から市場規模を見積もろうとした瞬間に足りないものが出てきます。家計調査の支出額は1世帯当たりで公表されているので、掛ける相手は人口ではなく世帯数です。
そして世帯数には、人口を見ているだけでは気づけない動きがあります。日本の人口はこの5年で2.5%減りましたが、世帯数は2.3%増えています。候補地を人口の増減だけで足切りしていると、需要が増えている地域を落とすことがあります。
この記事では、国勢調査の世帯数をどこで見るのか、「一般世帯」と「施設等の世帯」の区分が何に効くのか、そして令和7年国勢調査でいま何が公表され何がまだなのかを、総務省統計局の資料で確認します。商圏データの集め方から出店判断までの全体像は商圏分析のやり方 完全ガイドにまとめています。
最新は令和7年国勢調査 人口速報集計(令和8年5月29日公表)で、2025年10月1日現在の世帯数は5712万5千世帯、1世帯当たり人員は2.15人です。ただし速報集計は市区町村までで、一般世帯と施設等の世帯を分けていません。世帯の種類別や家族類型は「人口等基本集計」(令和8年9月までに公表予定)、町丁・字別の世帯数は令和2年国勢調査が最新です。
- 2025年の世帯数は5712万5千世帯。2020年から129万4千世帯の増加(2.3%増)。同じ期間に人口は309万7千人の減少(2.5%減)
- 統計局は「1970年から2025年までの世帯増減率は、いずれも人口増減率を上回っている」としている。世帯数の増加は例外ではなく55年続く傾向
- 国勢調査の世帯は「一般世帯」と「施設等の世帯」の2区分。速報集計は両者を合わせた数しか出していない
- 1世帯当たり人員は全国2.15人。最少は東京都1.88人、最多は山形県2.49人。同じ人口でも必要な店舗規模が変わる差
- 小地域(町丁・字)の世帯数は基本集計の公表後。いま町丁字で見るなら令和2年の数字で、年次を明記して使う
最新の世帯数はどこで見るのか
令和7年国勢調査は2025年10月1日現在で実施されました。その結果のうち、いちばん早く出るのが人口速報集計です。総務省統計局の「令和7年国勢調査 調査の結果」には、集計内容が「男女別人口及び世帯数の早期提供」、公表時期が令和8年5月29日と記載されています。
結果の要約はこう書いています。
「我が国の世帯数は5712 万5千世帯 1世帯当たり人員は2.15 人で引き続き減少」
結果の概要の本文はもう少し詳しく、次のとおりです。
「2025 年10 月1日現在における我が国の世帯数は5712 万5千世帯で、2020 年から129 万4千世帯の増加、2.3%増となっている。世帯数の推移をみると、調査開始から一貫して増加を続けているものの、1975 年~1980 年以降5~7%台で推移してきた増加率が、2005 年~2010 年は4.8%と低下し、2020 年~2025 年では2.3%となっている。」
読みどころは2つあります。ひとつは世帯数は調査開始から一貫して増え続けていること。もうひとつは、その増加率が明確に鈍っていることです。5〜7%台だった増加率が、直近5年では2.3%です。世帯数は今も増えていますが、増え方は当時の3分の1から半分程度まで落ちています。
集計の続きも公表予定が示されています。統計局が公開している集計体系の一覧では、「人口、世帯、住居に関する結果及び外国人、高齢者世帯、母子・父子世帯、親子の同居等に関する結果」を扱う人口等基本集計の全国結果の公表予定が令和8年9月まで(前回の令和2年調査では令和3年11月30日)とされています。世帯の種類別や家族類型別の数字は、そこで初めて出ます。
人口は減り、世帯は増えている
同じ速報集計で、人口はこうなっています。
「2025 年10 月1日現在における我が国の人口は1億2305 万人となっており、2020 年に比べ、人口は309 万7千人減少している。」
減少率は2.5%、年平均0.50%減です。人口と世帯を並べると、方向が逆になっています。
| 指標 | 2025年(令和7年) | 2020年からの増減 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 人口 | 1億2305万人 | 309万7千人の減少 | 2.5%減 |
| 世帯数 | 5712万5千世帯 | 129万4千世帯の増加 | 2.3%増 |
| 1世帯当たり人員 | 2.15人 | 2020年は2.26人 | 減少 |
これは今回だけの現象ではありません。統計局は1世帯当たり人員の解説でこう書いています。
「1970 年以降について5年ごとの推移をみると、1970 年から2025 年までの世帯増減率は、いずれも人口増減率を上回っている。その結果、1世帯当たり人員は、1970 年の3.45 人から徐々に減少を続け、1995 年には2.85 人と初めて3人を下回り、2025 年には2.15 人と更に減少している。」
55年間、一度の例外もなく世帯の増え方が人口の増え方を上回ってきた、ということです。世帯人員が3.45人から2.15人へ減った分、同じ人口を収めるのに必要な世帯の数が増えました。
出店の検討でこれが効くのは、需要の単位が世帯である品目です。住居、光熱・水道、家具・家事用品、そして冷蔵庫や洗濯機のような耐久消費財は、世帯が1つ増えれば1セット必要になります。人口が横ばいでも世帯が増えていれば、これらの需要は増えています。逆に、1人当たりで消費される品目は人口側で見るのが自然です。家計調査から市場規模を出すときは、支出額が1世帯当たりなのか1人当たりなのかを最初に確認してください。
もうひとつ、世帯人員が減ると1回あたりの買物点数が減り、来店頻度と店舗のフォーマットが変わります。単身世帯が多い商圏で大容量の品揃えを主力にすると、商圏人口が同じでも回りません。商圏人口の調べ方で人口を出したら、あわせて世帯数と世帯人員も出しておくと、この判断ができるようになります。
一般世帯と施設等の世帯
国勢調査の世帯には2つの種類があります。速報集計の用語の解説に、そのまま書かれています。
「国勢調査では、世帯を「一般世帯」と「施設等の世帯」の2種類に区分しているが、人口速報集計では両者を合わせた世帯数のみを公表している。」
「「一般世帯」とは、「施設等の世帯」以外の世帯をいう。「施設等の世帯」とは、学校の寮・寄宿舎の学生・生徒、病院・療養所などの入院者、社会施設の入所者、自衛隊の営舎内・艦船内の居住者、矯正施設の入所者などから成る世帯をいう。」
ここで見落としやすいのが1文目の後半です。速報集計の5712万5千世帯は、一般世帯と施設等の世帯を合わせた数です。分けた数字はまだ出ていません。
| 世帯の種類 | 定義(用語の解説) | 商圏分析での扱い |
|---|---|---|
| 一般世帯 | 「施設等の世帯」以外の世帯 | 買物・消費の単位として使えるのはこちら |
| 施設等の世帯 | 学校の寮・寄宿舎の学生・生徒、病院・療養所などの入院者、社会施設の入所者、自衛隊の営舎内・艦船内の居住者、矯正施設の入所者などから成る世帯 | 世帯単位の消費が発生しない。数え方も一般世帯と異なる |
大学の学生寮、大きな病院や療養所、社会福祉施設、駐屯地、矯正施設。こうしたものが商圏の中にある地域では、世帯数の総数と、実際に買物をする世帯の数がずれます。候補地の周辺に大規模な施設がある場合は、総数をそのまま使わず、一般世帯の数字が出るのを待つか、施設の存在を注記して扱うのが安全です。
なお家計調査など、多くの消費関連統計は一般世帯(さらにその中の二人以上の世帯や単身世帯)を対象にしています。掛け算をするなら、分子と分母を同じ世帯の範囲にそろえるのが原則です。
1世帯当たり人員は地域差が大きい
全国の1世帯当たり人員は2.15人ですが、都道府県で見ると幅があります。結果の概要はこう書いています。
「1世帯当たり人員を都道府県別にみると、山形県が2.49 人と最も多く、次いで福井県(2.48 人)、佐賀県(2.44 人)などとなっている。一方、1世帯当たり人員が最も少ないのは、東京都の1.88 人で、次いで北海道(2.02 人)、大阪府(2.03 人)などとなっている。」
| 区分 | 都道府県 | 1世帯当たり人員(2025年) |
|---|---|---|
| 全国 | — | 2.15人 |
| 多い順 | 山形県 | 2.49人 |
| 多い順 | 福井県 | 2.48人 |
| 多い順 | 佐賀県 | 2.44人 |
| 少ない順 | 東京都 | 1.88人 |
| 少ない順 | 北海道 | 2.02人 |
| 少ない順 | 大阪府 | 2.03人 |
山形県と東京都で0.61人の差があります。同じ商圏人口10万人でも、山形県の水準なら約4万世帯、東京都の水準なら約5万3千世帯という計算になります。世帯単位で需要が立つ商材では、この差はそのまま市場規模の差です。
また、統計局は「2020 年~2025 年の1世帯当たり人員の増減を都道府県別にみると、全ての都道府県で減少している。」としています。地方でも例外なく世帯は小さくなっており、地域差は残りつつ全体が同じ方向に動いています。数年前の資料の世帯人員をそのまま使い回すと、世帯数を過小に見積もることになります。
都道府県で見た世帯の増減
世帯数の増減も一様ではありません。結果の概要の記述です。
「2020 年~2025 年の世帯数の増減を都道府県別にみると、32 都府県で増加、15 道県で減少している。世帯増加率は、沖縄県が6.1%と最も高く、次いで東京都(4.7%)、大阪府(4.2%)などとなっている。減少率は、高知県が2.7%と最も高く、次いで青森県(2.5%)、山口県(2.0%)などとなっている。」
人口のほうは「東京都、沖縄県の2都県で人口増加。その他の45 道府県で人口減少」です。人口が増えているのは2都県だけなのに、世帯数は32都府県で増えているという対比になります。
| 2020年→2025年 | 増加した都道府県 | 減少した都道府県 |
|---|---|---|
| 人口 | 2都県(東京都、沖縄県) | 45道府県 |
| 世帯数 | 32都府県 | 15道県 |
この表が示しているのは、人口の増減だけで市場の拡大・縮小を判断すると、30県ぶんの判断を取り違えかねないということです。もちろん世帯が増えれば必ず売上が増えるわけではありませんが、少なくとも「人口減=需要減」という単純な引き算はできません。
なお、これらは都道府県単位の値です。同じ県内でも市区町村によって動きは違いますし、市区町村の中でも地区によって違います。実際の出店判断で使うのは、より細かい単位の数字です。市区町村より細かい人口の見方は町丁目の人口を調べる方法で扱っています。
町丁字の世帯数はまだ令和2年が最新
ここが実務上いちばん大事な制約です。統計局の集計体系一覧では、町丁・字等、基本単位区、地域メッシュを表章地域とする小地域集計について、「該当する基本集計等の公表後に集計し、地理データ等を活用して秘匿処理を施した上で、速やかに公表」と記載されています。
順番は、速報集計 → 人口等基本集計(令和8年9月まで) → 小地域集計、です。2026年9月時点で、町丁・字別の世帯数として使えるのは令和2年国勢調査(2020年10月1日現在)のものということになります。
| 見たい単位 | いま使える最新 | 次の更新 |
|---|---|---|
| 全国・都道府県・市区町村の世帯総数 | 令和7年 人口速報集計(令和8年5月29日公表) | 人口等基本集計で確定値 |
| 一般世帯/施設等の世帯の別、家族類型 | 令和2年 人口等基本集計 | 令和8年9月までに公表予定 |
| 町丁・字、基本単位区、メッシュの世帯数 | 令和2年 小地域集計 | 基本集計の公表後 |
この時期に資料をつくるときは、市区町村までは2025年、町丁字は2020年という混在が起きます。1枚の資料の中で年次の違う数字を並べること自体は珍しくありませんが、年次を必ず併記し、増減率をまたいで計算しないのが原則です。5年で世帯数が2.3%増えている以上、2020年の町丁字の世帯数は現在よりやや小さい可能性があります。
速報集計そのものにも性格があります。統計局の集計体系一覧では、人口速報集計は「要計表による人口集計」と注記されています。人口等基本集計の人口及び世帯数が確定人口・世帯数として官報に公示される、という記載もあり、速報値はのちに確定値へ置き換わる前提の数字です。細かい桁まで引用する資料をつくるなら、確定値を待つか、速報である旨を明記してください。
年次の新しさだけを優先したい場合は、毎年1月1日現在で公表される住民基本台帳の世帯数という選択肢もあります。ただし国勢調査とは調査の考え方が違うため、そのまま比較はできません。違いは住民基本台帳人口とはで整理しています。
商圏の資料で世帯数をどう使うか
最後に、実際の使い方を整理します。
| 目的 | 使う数字 | 注意点 |
|---|---|---|
| 商圏の市場規模を出す | 商圏内の世帯数 × 1世帯当たり年間支出 | 支出側が一般世帯ベースなら、世帯数も一般世帯にそろえる |
| 店舗フォーマットを決める | 1世帯当たり人員 | 全国平均2.15人ではなく、その地域の値を使う |
| 候補地の将来性を見る | 世帯数の増減率 | 人口の増減率と方向が逆になることがある |
| チラシ・ポスティングの部数を決める | 町丁字別の世帯数 | 2020年の数字である旨を明記する |
ポスティングや新聞折込の部数は、人口ではなく世帯数で決まります。ここで町丁字別の世帯数がそのまま使えるのは、小地域集計の実務的な価値が高い理由のひとつです。
もうひとつ、世帯数は住宅の供給とセットで動きます。大きな集合住宅が竣工すれば、その町丁字の世帯数は数年で大きく変わります。国勢調査は5年に1度なので、間の変化は別の指標で補う必要があります。着工の動きを追う方法は新設住宅着工戸数の調べ方で扱っています。5年より先を見るなら将来推計人口もあわせて確認してください。
資料の書き方としては、世帯数を出したら必ず年次・集計区分・世帯の範囲の3点を添えます。「5万2千世帯」ではなく「5万2千世帯(令和2年国勢調査 小地域集計、一般世帯)」と書く。この一手間があるかどうかで、その後の議論の質が変わります。数字を資料へ落とし込む型は出店計画書の書き方にまとめています。
よくある質問
Q. 国勢調査の最新の世帯数はいくつですか。
A. 2025年(令和7年)10月1日現在で5712万5千世帯です。令和7年国勢調査の人口速報集計として、令和8年5月29日に公表されました。2020年から129万4千世帯の増加(2.3%増)です。同じ日現在の人口は1億2305万人で、2020年から309万7千人の減少(2.5%減)となっています。なお人口速報集計は要計表による集計で、確定した人口及び世帯数は人口等基本集計で公表されます。
Q. 人口が減っているのに、なぜ世帯数は増えているのですか。
A. 1世帯当たりの人員が減っているためです。統計局の結果の概要は「1970 年以降について5年ごとの推移をみると、1970 年から2025 年までの世帯増減率は、いずれも人口増減率を上回っている。その結果、1世帯当たり人員は、1970 年の3.45 人から徐々に減少を続け、1995 年には2.85 人と初めて3人を下回り、2025 年には2.15 人と更に減少している。」としています。同じ人口を収めるのに必要な世帯の数が増えている、という関係です。
Q. 一般世帯と施設等の世帯は何が違うのですか。
A. 令和7年国勢調査 人口速報集計の用語の解説は「国勢調査では、世帯を「一般世帯」と「施設等の世帯」の2種類に区分している」としたうえで、「「一般世帯」とは、「施設等の世帯」以外の世帯をいう。「施設等の世帯」とは、学校の寮・寄宿舎の学生・生徒、病院・療養所などの入院者、社会施設の入所者、自衛隊の営舎内・艦船内の居住者、矯正施設の入所者などから成る世帯をいう。」と定義しています。買物や消費の単位として使えるのは一般世帯のほうです。
Q. 速報集計の世帯数には施設等の世帯も含まれていますか。
A. 含まれています。用語の解説は「人口速報集計では両者を合わせた世帯数のみを公表している。」としています。一般世帯だけの数字が必要な場合は、人口等基本集計の公表を待つことになります。集計体系一覧では、人口等基本集計の全国結果の公表予定は令和8年9月までとされています(前回の令和2年調査では令和3年11月30日に公表)。
Q. 町丁目や字ごとの世帯数はどこで見られますか。
A. 国勢調査の小地域集計です。ただし集計体系一覧では、小地域集計は「該当する基本集計等の公表後に集計し、地理データ等を活用して秘匿処理を施した上で、速やかに公表」とされており、令和7年調査ぶんはまだ公表されていません。2026年9月時点で町丁・字別の世帯数として使えるのは令和2年国勢調査のものです。資料に載せるときは年次を必ず併記してください。
Q. 1世帯当たり人員が地域で違うと、何が変わりますか。
A. 同じ商圏人口でも世帯数が変わります。令和7年国勢調査によると1世帯当たり人員は全国で2.15人、都道府県別では山形県が2.49人と最も多く、東京都が1.88人と最も少なくなっています。商圏人口10万人を全国平均で割ると約4万7千世帯ですが、山形県の水準なら約4万世帯、東京都の水準なら約5万3千世帯です。世帯単位で需要が立つ商材では、この差が市場規模の差になります。