候補地に半径2kmの円を描いたら、その半分が田畑だった。人口が思ったほど積み上がらない。地主から「ここは調整区域だから店は建てられない」と言われた——出店検討でこの言葉に当たると、話が一気に止まります。

市街化調整区域は、都市計画法が定める区域の名前です。この記事では、条文の定義、全国でどれくらいの広さと人口があるのか、出店の可否は何で決まるのか、そして商圏を描くときにどう扱えばよいのかを、法令の原文と国土交通省の統計から整理します。商圏分析の全体像から確認したい方は商圏分析のやり方 完全ガイドを先にご覧ください。

この記事の要点
  • 都市計画法第7条は、市街化区域を「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」、市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定義している
  • 全国の市街化調整区域は375万8,731haで、市街化区域(145万6,349ha)の約2.6倍の面積。一方で人口は988万人と、市街化区域(8,881万人)の約9分の1
  • 人口密度に直すと市街化区域が約61人/ha、市街化調整区域が約2.6人/haで、約23倍の差がある
  • そもそも区域区分が定められているのは、全国997の都市計画区域のうち246区域だけ。多くの市町村には市街化調整区域が存在しない
  • 出店の可否は「区域の名前」ではなく、開発許可(法第29条)と建築等の制限(法第43条)で決まる。禁止ではなく許可制である

市街化調整区域とは(法第7条の定義)

定義は都市計画法第7条にあります。第1項は次のとおりです。

都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。

そして第2項と第3項が、それぞれの中身を定めています。

2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

市街化調整区域の定義は、条文にしてわずか一行です。「市街化を抑制すべき区域」。禁止でも保護でもなく、抑制という言葉が使われています。この一語が、後で述べる「原則は許可が要るが、例外は条文に列挙されている」という制度の形をそのまま表しています。

なお、市街化区域と市街化調整区域に分けることを「区域区分」と呼びます。区域区分は都市計画区域の中で行うものなので、そもそも都市計画区域でない土地には市街化調整区域も存在しません。

区域区分がある市町村は半分以下

ここが最初につまずきやすいところです。「市街化調整区域」という言葉は全国どこでも通じますが、実際に区域区分が定められている都市計画区域は一部です。

国土交通省の令和7年都市計画現況調査(令和7年3月31日現在)によると、全国の都市計画区域は997区域あり、これに関わる市町村は1,352(市787・町529・村36)です。このうち区域区分が決定されている区域は246区域、関わる市町村は616(市436・町169・村11)でした。

区分区域数関係市町村数
都市計画区域9971,352
うち区域区分(市街化区域・市街化調整区域)決定済246616
うち用途地域決定済8191,193

区域数でみれば区域区分があるのは約4分の1、市町村数でみても半分以下です。区域区分が定められていない都市計画区域は「非線引き都市計画区域」と呼ばれ、こちらには市街化調整区域という区分自体がありません。

つまり、候補地について最初に確認すべきなのは「調整区域かどうか」ではなく、「その市町村に区域区分があるかどうか」です。区域区分がなければ、この記事で扱う制限は当てはまりません。代わりに用途地域の調べ方で扱っている用途地域や、特定用途制限地域による制限を見ることになります。

面積は2.6倍、人口は9分の1

商圏の観点でいちばん効いてくるのは、この非対称です。同じ令和7年都市計画現況調査から、全国計の数値を並べます。

区分面積現在人口人口密度
市街化区域1,456,348.7 ha8,880.6万人約61.0人/ha
市街化調整区域3,758,731.2 ha988.1万人約2.6人/ha
都市計画区域(合計)10,285,002.2 ha1億1,792.9万人約11.5人/ha

面積は市街化調整区域のほうが約2.6倍広いのに、人口は市街化区域の約9分の1。人口密度に直すと約23倍の開きがあります(密度は面積と人口から見晴編集部が算出した参考値です)。

この差が意味するのは単純です。候補地から描いた円が市街化調整区域側へ広がっても、商圏人口はほとんど増えない。半径を1kmから2kmへ広げれば円の面積は4倍になりますが、増えた3倍ぶんが調整区域なら、人口の伸びは面積の伸びに全く比例しません。「半径を広げても人口が思ったほど積み上がらない」という感覚には、この構造的な理由があります。

逆にいえば、同じ半径でも市街化区域をどれだけ含むかで商圏人口は何倍も変わります。商圏人口そのものの調べ方は商圏人口の調べ方で扱っています。業態ごとの目安と実測の関係はスーパーの商圏人口もあわせてご覧ください。

出店可否を決めるのは第29条と第43条

「市街化調整区域には店を建てられない」という言い方をよく聞きますが、条文はそう書いていません。決めているのは2つの条文です。

開発行為には許可が要る(第29条)

第29条第1項は、都市計画区域内で開発行為をする者は、あらかじめ都道府県知事(指定都市等ではその長)の許可を受けなければならないと定めています。そのうえで、ただし書きで許可不要の場合を列挙しており、そこに重要な非対称があります。

一 市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの

この第1号に市街化調整区域は入っていません。市街化区域なら「政令で定める規模未満」の小規模な開発は許可不要ですが、市街化調整区域にはその規模による除外がない、という構造です。ここが「調整区域は厳しい」と言われる実体のひとつです。

そして市街化調整区域での開発許可には、第34条という追加の関門があります。第34条は「前条の規定にかかわらず」として、申請が同条の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ許可してはならない、と定めています。列挙されているものには、たとえば次のようなものがあります。

一 主として当該開発区域の周辺の地域において居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物又はこれらの者の日常生活のため必要な物品の販売、加工若しくは修理その他の業務を営む店舗、事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

第1号は、周辺住民の日常生活に必要な物品の販売等を営む店舗を挙げています。よく「調整区域でもコンビニは建つことがある」と言われる根拠は、こうした号のいずれかに当たると判断される場合がある、という点にあります。ただし該当するかどうかは個別の判断であり、政令や自治体の運用基準に左右されます。号があること自体は、出店できることを意味しません。

開発を伴わない建築にも制限がある(第43条)

造成を伴わなければ自由か、というとそうではありません。第43条第1項は次のように定めています。

何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。

注目したいのは末尾の「その用途を変更して」という部分です。既存の建物を借りて業態を変えるだけでも、用途変更として許可の対象になり得ます。「建物はもう建っているから大丈夫」という前提が通らない場面があるということです。

自分の候補地がどちらかを調べる

調べ方は3経路あります。上から順に、確実性が高い順です。

経路内容向いている場面
市町村の都市計画課に確認都市計画図の閲覧・窓口や電話での確認。区域区分の有無、該当区域、運用基準まで確認できる実際に契約へ進む候補地
市町村の都市計画情報公開システム多くの自治体がウェブ地図で用途地域とあわせて区域区分を公開している候補地を数件に絞った段階
国土数値情報「都市地域データ」国土交通省がGISデータとして提供。都市計画区域・市街化区域・市街化調整区域の区域を面データで扱える広域を一括で見たいとき

広域のスクリーニングにはGISデータが便利ですが、更新時点の問題があります。国土数値情報のデータは基準年度が明示されており、その後の都市計画変更は反映されていません。データの入手と使用条件については国土数値情報とは?商圏分析で使えるデータと注意点で扱っています。市町村側の一次資料としては都市計画基礎調査も参照できます。

実務上の順番としては、広域はGISデータで当たりを付け、候補が絞れたら必ず市町村に確認するのが現実的です。金額の大きい判断を、更新時点の分からない地図データだけで進めないでください。

商圏を描くときの扱い方

市街化調整区域は、商圏分析では2つの意味を持ちます。混同すると判断を誤ります。

  1. 出店可否の制約として……候補地そのものが調整区域なら、許可の見通しを立てないと計画が進みません
  2. 商圏の中身として……候補地は市街化区域でも、描いた円の一部が調整区域にかかることは普通にあります

2つ目のほうが、日常的には頻度が高い論点です。ここで効くのが前述の人口密度差です。円の面積のうち調整区域が占める割合が大きいほど、面積あたりの商圏人口は下がります。逆に、同じ面積でも市街化区域の割合が高ければ人口は積み上がります。

だからこそ、商圏は面積ではなく人口で比べるのが基本になります。「半径2km」という条件をそろえても、その中身が違えば比較になりません。円の形ではなく、実際に人が住んでいる範囲がどこまで届くかを見る、という考え方については円商圏と実勢商圏のずれで扱っています。

もうひとつ、調整区域が広い候補地では到達手段が車に寄るという特徴もあります。密度が低い分だけ距離が伸びるため、徒歩圏の設定はほとんど機能しません。到達圏の考え方は立地調査の方法で整理しています。

この記事の結論

市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」であって、出店が禁止された区域ではありません。可否は法第29条の開発許可と法第43条の建築等の制限で個別に決まります。一方、商圏の観点では話が単純です。全国の市街化調整区域は市街化区域の約2.6倍の面積を持ちながら人口は約9分の1。円を広げても人口が伸びない土地が、そこにあります。

よくある質問

市街化調整区域には店舗を建てられないのですか?

一律に禁止されているわけではありません。都市計画法第7条第3項は市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定義しており、第29条の開発許可と第43条の建築等の制限によって個別に判断される仕組みです。第34条第1号は、周辺の地域に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売等を営む店舗を挙げています。該当するかどうかは政令と自治体の運用基準によるため、市町村の都市計画課に確認してください。

市街化区域と市街化調整区域の違いは何ですか?

都市計画法第7条第2項は市街化区域を「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」、第3項は市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定めています。前者は市街化を進める区域、後者は抑える区域という関係です。この2つに分けること自体を「区域区分」と呼びます。

自分の市町村に市街化調整区域はありますか?

区域区分が定められていない市町村には存在しません。令和7年都市計画現況調査(令和7年3月31日現在)では、全国997の都市計画区域のうち区域区分が決定されているのは246区域、関係市町村は616でした。都市計画区域に関わる市町村は1,352なので、半分以下にとどまります。まず市町村に区域区分の有無を確認してください。

市街化調整区域の商圏人口はどう扱えばよいですか?

ゼロとして扱う必要はありませんが、面積の割に人口が乗らない前提で見てください。全国計では市街化調整区域の人口密度は約2.6人/ha、市街化区域は約61.0人/haで、約23倍の差があります(面積と現在人口から算出した参考値)。半径を広げたときに増える面積が調整区域側なら、商圏人口の伸びは限定的です。

既存の建物を借りて出店する場合も許可が要りますか?

用途を変更する場合は対象になり得ます。第43条第1項は「建築物を改築し、又はその用途を変更して」同項に規定する建築物以外の建築物とすることも、都道府県知事の許可を要する行為として書いています。建物が既にあることは、そのまま使えることを意味しません。契約前に市町村へ確認してください。

非線引き都市計画区域とは何ですか?

区域区分が定められていない都市計画区域を指す通称です。都市計画法第7条第1項は区域区分を「定めることができる」とし、一定の都市計画区域については「定めるものとする」としています。定められていない区域では市街化区域・市街化調整区域という区分自体が存在せず、開発許可の規模による除外も第29条第1項第1号に明記されています。

区域区分は変わることがありますか?

都市計画の変更として見直されることがあります。都市計画現況調査は毎年実施されており、令和7年調査は令和7年3月31日現在のデータです。GISデータや過去の資料を根拠にするときは、必ず基準時点を確認し、実際の判断は市町村の最新の都市計画図によってください。

出典:都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第7条・第29条・第34条・第43条。条文はe-Gov法令検索のAPIから2026年8月22日に取得し、原文から引用しています(同日時点の施行日は2026年5月27日)。統計は国土交通省「令和7年都市計画現況調査 全国計」(令和7年3月31日現在)の公表ファイルを同日に取得し、面積・人口の各欄の値をそのまま用いました。人口密度は面積と現在人口から見晴編集部が算出した参考値です。制度の解釈・個別の適用については、必ず市町村の都市計画担当課および専門家の確認によってください。