候補地の用途地域を調べて「近隣商業地域だから問題ない」と判断したのに、あとから市の条例で止まった——出店の初期調査でいちばん多い取りこぼしがこれです。用途地域は建てられるものの下地でしかなく、その上に自治体が独自の制限を重ねている場所があります。その仕組みが特別用途地区と特定用途制限地域です。

名前が似ているうえ、どちらも「用途」「制限」という語が入るため混同されがちですが、この2つは打てる場所がまったく違います。片方は用途地域の中にしか定められず、もう片方は用途地域が定められていない区域にしか定められません。この記事では、都市計画法と建築基準法の条文からその線引きを確認し、候補地調査でどこまで見に行けばよいのかを整理します。データ収集から出店判断までの全体像は商圏分析のやり方 完全ガイドにまとめています。

結論

都市計画法第9条第14項は特別用途地区を「用途地域内の一定の地区」に定めるものとし、同条第15項は特定用途制限地域を「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内」に定めるものとしています。つまり用途地域があるかないかで、使われる制度がそのまま入れ替わります。そして制限の中身はどちらも法律ではなく地方公共団体の条例に置かれている(建築基準法第49条・第49条の2)ため、条文を読んでも自分の候補地で何が禁止されているかは分かりません。市区町村の条例まで見に行くのが必須です。

この記事の要点
  • 特別用途地区は用途地域の中、特定用途制限地域は用途地域が無い区域(市街化調整区域を除く)。打てる場所が排他的に分かれている
  • どちらも制限の中身は条例で定める。法律・政令には具体の用途が書かれていない
  • 特別用途地区は制限だけでなく緩和もできる(国土交通大臣の承認が要る)
  • 特別用途地区の種類は都市計画で定める。名称は自治体ごとに異なり、法律に一覧は無い
  • 敷地・構造・建築設備の制限も条例で上乗せできる(建築基準法第50条)。用途だけの話ではない

用途地域は13種類の下地でしかない

まず全体の並びを確認します。都市計画法第8条第1項は、都市計画区域について定めることができる地域地区を第1号から第16号まで列挙しており、その先頭が用途地域です。

第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)

そして第2号が特別用途地区、第2号の2が特定用途制限地域です。同じ条の同じ項に並んでいる別々の地域地区で、上下関係はありません。用途地域の調べ方そのものは用途地域の調べ方で扱っています。

用途地域の中で何が建てられるかは、建築基準法第48条が別表第二へ振っています。たとえば同条第9項は「近隣商業地域内においては、別表第二(り)項に掲げる建築物は、建築してはならない。」という書き方です。ここまでが全国共通のルールで、以降が自治体ごとの上乗せになります。

特別用途地区は用途地域の中にだけ打てる

定義は都市計画法第9条第14項にあります。

特別用途地区は、用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区とする。

読み解くポイントは3つです。第一に「用途地域内の一定の地区」——用途地域が定められていない場所には特別用途地区を定められません。第二に「当該用途地域の指定を補完して」——用途地域を置き換えるのではなく、その上に重ねる関係です。第三に目的が「土地利用の増進、環境の保護等」と幅広く書かれていること。制限のためだけの制度ではない、という含みがここにあります。

種類の定め方も条文に出てきます。同法第8条第3項第1号は、都市計画に定めるものとして「地域地区の種類(特別用途地区にあつては、その指定により実現を図るべき特別の目的を明らかにした特別用途地区の種類)、位置及び区域」を挙げています。種類そのものを都市計画で決めるという建て付けなので、法律の側に「◯◯地区」という一覧はありません。自治体によって名称が違うのはこのためで、候補地の自治体で使われている呼び名を都市計画図で拾いにいく必要があります。

特定用途制限地域は用途地域が無い区域だけ

対して特定用途制限地域は、同法第9条第15項です。

特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とする。

ここも3つに分けて読みます。第一に対象が「用途地域が定められていない土地の区域」、いわゆる白地地域であること。第二に括弧書きで市街化調整区域が除かれていること。市街化調整区域はそもそも開発を抑える区域なので、この制度を重ねる必要がないという整理です。市街化調整区域自体の扱いは市街化調整区域とはで扱っています。第三に、都市計画に定めるのが「制限すべき特定の建築物等の用途の概要」であること。同法第8条第3項第2号ニも、特定用途制限地域について定める事項を「制限すべき特定の建築物等の用途の概要」としています。概要までが都市計画で、具体は条例という二段構えです。

比べる点特別用途地区特定用途制限地域
定められる場所用途地域内の一定の地区用途地域が定められていない区域(市街化調整区域を除く)
根拠(都市計画法)第8条第1項第2号/第9条第14項第8条第1項第2号の2/第9条第15項
根拠(建築基準法)第49条第49条の2
都市計画で定める事項種類・位置・区域位置・区域と、制限すべき特定の建築物等の用途の概要
制限の中身地方公共団体の条例政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例
緩和できる(国土交通大臣の承認が必要)条文に緩和の規定は置かれていない

なお都市計画法第8条第2項は、準都市計画区域について「前項第一号から第二号の二まで」などを定めることができるとしています。第1号から第2号の2までは用途地域・特別用途地区・特定用途制限地域なので、準都市計画区域でもこの3つは定められることになります。都市計画区域の外だから何も無い、という前提は置けません。

制限の中身が条文に書いていない理由

建築基準法に移ります。第49条第1項はこうです。

特別用途地区内においては、前条第一項から第十三項までに定めるものを除くほか、その地区の指定の目的のためにする建築物の建築の制限又は禁止に関して必要な規定は、地方公共団体の条例で定める。

「前条第一項から第十三項まで」は第48条、つまり用途地域ごとの別表第二の制限です。それを除いたうえで、追加の制限や禁止を条例で定めるという構造になっています。用途地域の制限に上書きするのではなく、その外側に足す形です。

特定用途制限地域は第49条の2です。「特定用途制限地域内における建築物の用途の制限は、当該特定用途制限地域に関する都市計画に即し、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で定める。」こちらは政令で定める基準に従うという縛りが1つ多く入っています。

いずれにしても、最終的に効いてくるのは条例です。国の法令をいくら読んでも、候補地で具体的に何が建てられないかは分かりません。ここが実務でいちばん誤解されるところで、「法律を確認しました」で止めると、条例だけが残ります。

もうひとつ、用途以外の制限も条例に置けます。同法第50条は「用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、都市再生特別地区、居住環境向上用途誘導地区又は特定用途誘導地区内における建築物の敷地、構造又は建築設備に関する制限で当該地域又は地区の指定の目的のために必要なものは、地方公共団体の条例で定める。」としています。敷地や設備の条件で計画が変わることもあるので、用途の可否だけを確認して終わらせないほうが安全です。

緩和もできる、という見落とし

特別用途地区について、条文にはもう1項あります。建築基準法第49条第2項です。

特別用途地区内においては、地方公共団体は、その地区の指定の目的のために必要と認める場合においては、国土交通大臣の承認を得て、条例で、前条第一項から第十三項までの規定による制限を緩和することができる。

特別用途地区は制限を足す仕組みだと理解されがちですが、条文上は緩和の側にも使えます。しかも緩和には国土交通大臣の承認という手続きが要ると明記されています。制限を足すほうにこの手続きは書かれていません。

実務上の意味は、特別用途地区という名前を見ただけで「規制が厳しい場所だ」と決めつけられないということです。用途地域の制限では建てられないはずのものが、その地区では条例で緩和されている可能性があります。候補地が特別用途地区にかかっていたら、締めているのか緩めているのかを条例本文で確認する——ここまでが1セットです。

候補地調査でどこまで見るか

ここまでを手順に落とすと4段階になります。

  1. 用途地域を確認する。都市計画情報の閲覧サービスで候補地の用途地域を押さえます。手順は用途地域の調べ方のとおりです
  2. 用途地域が「無い」場合を見落とさない。白地地域なら特定用途制限地域が定められている可能性があります。市街化調整区域なら別の話(開発許可の世界)になります
  3. 同じ図面で地域地区の重ねを確認する。特別用途地区・高度地区・防火地域などは用途地域と別レイヤで表示されます。都市計画図の凡例を最後まで見る、が実務的な要点です
  4. 該当したら条例の本文に当たる。制限の実体は条例なので、自治体サイトの例規集で当該条例を開き、用途と規模の条件を確認します

この4段階は、候補地が数件のうちは手作業で回せます。問題は候補が20件、30件と増えたときで、そこで初めて「どの候補が制度上のリスクを持っているか」を先に絞る必要が出てきます。商圏規模の比較で候補を数件まで落としてから制度確認に入る、という順番にすると、確認の総量が現実的な範囲に収まります。

あわせて押さえておきたいのが、大規模な店舗には別の手続きが乗ることです。大規模小売店舗立地法の届出は用途地域の可否とは別の枠組みで、こちらは店舗面積で決まります。市町村の立地適正化計画の区域設定も、将来の周辺人口の見通しに効いてきます。制度は独立して並んでいるので、1つ確認したから安心ということにはなりません。

候補地そのものの絞り込みは立地調査の方法出店計画書の書き方、周辺の人口は商圏人口の調べ方で扱っています。制度の確認は最後の関門ではなく、候補を絞る過程に挟み込むほうが手戻りが少ない作業です。

出典:都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条・第9条、建築基準法(昭和25年法律第201号)第48条・第49条・第49条の2・第50条。いずれもデジタル庁 e-Gov 法令検索の法令データから引用しました(都市計画法・建築基準法とも2026年5月27日施行版)。強調は編集部によるものです。具体的な制限の内容は各地方公共団体の条例で定められており、候補地ごとに異なります。実際の判断は当該自治体の都市計画担当窓口および条例本文の確認によってください。

よくある質問

Q. 特別用途地区と特定用途制限地域は何が違うのですか。
A. 定められる場所が排他的に分かれています。都市計画法第9条第14項は特別用途地区を「用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区とする。」としています。一方、同条第15項は特定用途制限地域を「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において……制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とする。」としています。用途地域があれば前者、無ければ後者、市街化調整区域はどちらでもない、という整理になります。

Q. 特別用途地区にかかっていると、店舗は建てられないのですか。
A. 条例を見ないと分かりません。建築基準法第49条第1項は「その地区の指定の目的のためにする建築物の建築の制限又は禁止に関して必要な規定は、地方公共団体の条例で定める。」としており、制限の中身は法律ではなく条例に置かれています。さらに同条第2項は、地方公共団体が国土交通大臣の承認を得て、条例で第48条の制限を緩和できるとしています。締める方向にも緩める方向にも使える制度なので、地区名だけで判断せず条例本文を確認してください。

Q. 特別用途地区にはどんな種類がありますか。
A. 法律に一覧はありません。都市計画法第8条第3項第1号は、都市計画に定める事項として「地域地区の種類(特別用途地区にあつては、その指定により実現を図るべき特別の目的を明らかにした特別用途地区の種類)、位置及び区域」を挙げており、種類そのものを都市計画で定める建て付けになっています。そのため名称や区分は自治体ごとに異なります。候補地の自治体が公開している都市計画図と条例で、実際に使われている種類を確認することになります。

Q. 市街化調整区域には特定用途制限地域が定められますか。
A. 定められません。都市計画法第9条第15項は対象を「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内」と明記しており、括弧書きで市街化調整区域が除かれています。市街化調整区域での建築や開発は、この制度ではなく開発許可の枠組みで判断されます。

Q. 都市計画区域の外なら、用途の制限は無いということですか。
A. そう言い切ることはできません。都市計画法第8条第2項は、準都市計画区域について「前項第一号から第二号の二まで、第三号(高度地区に係る部分に限る。)、第六号、第七号、第十二号……又は第十五号に掲げる地域又は地区を定めることができる。」としています。第1号から第2号の2までは用途地域・特別用途地区・特定用途制限地域なので、準都市計画区域でもこの3つは定められます。区域の種別を確認したうえで、地域地区の指定の有無を見に行く必要があります。

Q. 用途の制限だけ確認すれば足りますか。
A. 足りない場合があります。建築基準法第50条は「用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域……内における建築物の敷地、構造又は建築設備に関する制限で当該地域又は地区の指定の目的のために必要なものは、地方公共団体の条例で定める。」としています。用途として認められていても、敷地の条件や設備の要件で計画の変更が必要になることがあります。条例を開いたときは、用途の条文だけでなく敷地・構造・設備の条文まで目を通しておくと安全です。