候補地の商圏人口が足りていても、10年後にその人口が残っているとは限りません。人口が減る局面では、市町村が「どこに住んでもらい、どこに施設を集めるか」を先に決めています。それを地図で公表しているのが立地適正化計画です。

この計画は、出店側にとって2つの意味があります。ひとつは将来の人口の置き場所が読めること。もうひとつは、区域の外に出店すると着手30日前までに市町村長へ届け出る義務が発生する場合があることです。どちらも国勢調査の数字だけを見ていると気づけません。この記事では都市再生特別措置法の条文から、区域の定義・誘導施設・届出義務を整理します。データ入手から出店判断までの全体像は商圏分析のやり方 完全ガイドにまとめています。

結論

立地適正化計画は、市町村が都市計画区域内について作成する「住宅及び都市機能増進施設の立地の適正化を図るための計画」です(都市再生特別措置法第81条第1項)。計画には居住誘導区域都市機能誘導区域、そして区域ごとに立地を誘導する誘導施設が書かれます。法律は都市機能増進施設を「医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の共同の福祉又は利便のため必要な施設」と定義していて、商業施設は最初から対象に入っています。作成は「できる」規定なので、計画が無い市町村もあります。

この記事の要点
  • 根拠法は都市再生特別措置法第81条以下。市町村が都市計画区域内について作成する
  • 書かれるのは居住誘導区域(住まいを誘導)と都市機能誘導区域(施設を誘導)、および区域ごとの誘導施設
  • 居住誘導区域ので一定規模の住宅開発をするときは着手30日前までに市町村長へ届出。政令の基準は3戸0.1ヘクタール
  • 誘導施設を持つ建築物を都市機能誘導区域の外に建てるときも30日前までに届出(同法第108条)
  • 誘導施設を休止・廃止するときも30日前までに届出が要る(同法第108条の2)。撤退にも手続きがある

立地適正化計画とは何か

根拠は都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)の第六章「立地適正化計画に係る特別の措置」です。第81条第1項が計画そのものを定義しています。

市町村は、単独で又は共同して、都市計画法第四条第二項に規定する都市計画区域内の区域について、都市再生基本方針に基づき、住宅及び都市機能増進施設(医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の共同の福祉又は利便のため必要な施設であって、都市機能の増進に著しく寄与するものをいう。以下同じ。)の立地の適正化を図るための計画(以下「立地適正化計画」という。)を作成することができる。

読み取れることが3つあります。第一に、主体は市町村で、都道府県ではありません。第二に、対象は都市計画区域内に限られます。都市計画区域の考え方は用途地域の調べ方市街化調整区域とはで扱っています。第三に、「作成することができる」という書き方なので、義務ではありません。つまり計画が存在しない市町村があることが前提の制度です。

計画に何を書くかは第81条第2項が定めています。「立地適正化計画には、その区域を記載するほか、おおむね次に掲げる事項を記載するものとする。」として、第1号に基本的な方針、第2号に居住誘導区域、第3号に都市機能誘導区域と誘導施設、第4号に誘導施設の整備事業、第5号に防災指針、第6号・第7号にその他の事項が並びます。

2つの区域と「誘導施設」

出店側が見るのは第2号と第3号です。条文はそれぞれ次のように書いています。

第2号(居住誘導区域):「都市の居住者の居住を誘導すべき区域(以下「居住誘導区域」という。)及び居住環境の向上、公共交通の確保その他の当該居住誘導区域に都市の居住者の居住を誘導するために市町村が講ずべき施策に関する事項

第3号(都市機能誘導区域・誘導施設):「都市機能増進施設の立地を誘導すべき区域(以下「都市機能誘導区域」という。)及び当該都市機能誘導区域ごとにその立地を誘導すべき都市機能増進施設(以下「誘導施設」という。)並びに必要な土地の確保、費用の補助その他の当該都市機能誘導区域に当該誘導施設の立地を誘導するために市町村が講ずべき施策に関する事項

ここで重要なのは、誘導施設が「都市機能誘導区域ごとに」定められることです。同じ市の中でも、A地区では病院と大型店を誘導し、B地区では子育て支援施設だけを誘導する、という書き分けが起こります。自分の業態がどの区域の誘導施設に入っているかは、市町村ごと・区域ごとに読む必要があります。

なお第81条第5項には、居住誘導区域側の施設として居住環境向上施設という枠も用意されています。条文は「病院、店舗その他の都市の居住者の日常生活に必要な施設であって、居住環境の向上に資するもの」と定義しています。日常生活に近い業態は、都市機能誘導区域ではなくこちらで扱われることがあります。

商業施設は最初から対象に入っている

第81条第1項の括弧書きをもう一度見ると、都市機能増進施設の例示は「医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の共同の福祉又は利便のため必要な施設であって、都市機能の増進に著しく寄与するもの」です。商業施設が名指しで入っています。

ただし条件が付いています。「都市機能の増進に著しく寄与するもの」です。すべての店舗が自動的に誘導施設になるわけではなく、どの用途をどの規模で誘導施設とするかは市町村が計画に書いた内容で決まります。大規模な小売店舗については別に大規模小売店舗立地法の届出もあり、こちらは店舗面積1,000平方メートル超が対象です。2つの制度は目的も届出先も別なので、片方をクリアしても他方が残ります。

区域の外に出すと届出が要る

立地適正化計画は、区域外での建築を禁止する仕組みではありません。かわりに届出を求めます。条文は2か所に分かれています。

居住誘導区域の外(第88条)

第88条第1項は、居住誘導区域外で一定の住宅開発・新築等を行おうとする者に対し「これらの行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。」と定めています。

「一定の」の中身は政令です。都市再生特別措置法施行令(平成14年政令第190号)第33条は「法第八十八条第一項の政令で定める戸数は、三戸とする。」「法第八十八条第一項の政令で定める規模は、〇・一ヘクタールとする。」としています。3戸未満の住宅でも、開発行為の規模が0.1ヘクタール以上なら届出の対象という読み方になります。

届出を受けた市町村長は、居住の誘導に支障があると認めるときは勧告ができ(第88条第3項)、勧告に従わなかった事業者については公表できる場合があります(同条第5項。対象区域は施行令第36条で急傾斜地崩壊危険区域と定められています)。

都市機能誘導区域の外(第108条・第108条の2)

誘導施設のほうはもっと直接に効きます。第108条第1項は、計画に記載された誘導施設を有する建築物を建てようとする者のうち、その誘導施設を誘導する都市機能誘導区域内で行う者を除いて、「これらの行為に着手する日の三十日前までに」市町村長に届け出なければならないとしています。つまり誘導施設に指定された業態を、区域の外に出店する場合が届出の対象です。

さらに第108条の2第1項は、撤退側も対象にしています。「立地適正化計画に記載された都市機能誘導区域内において、当該都市機能誘導区域に係る誘導施設を休止し、又は廃止しようとする者は、休止し、又は廃止しようとする日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。閉店にも30日前の届出が要ることになります。区画を借りる前に、その建物が誘導施設として計画に載っていないかを確認しておく価値があります。

出店判断での読み方

実務での使い方は3ステップです。

  1. 候補地の市町村に計画があるかを調べる。作成は任意なので、まず有無から確認します。市町村の都市計画担当課のページに「立地適正化計画」の名前で公表されているのが通常です。無ければこの制度の論点は発生しません
  2. 候補地が居住誘導区域・都市機能誘導区域の内か外かを見る。区域図は計画本体に添付されています。区域の内側は、市町村が人口と施設を残す方針の場所です。将来人口の見通しそのものは将来推計人口の調べ方と突き合わせてください
  3. 誘導施設の一覧に自分の業態が入っているかを見る。入っていれば、区域外への出店で第108条の届出が発生します。入っていなければ、この届出の対象にはなりません

出店計画書に書くときは、計画名・策定年次・区域の別(居住誘導区域内/外など)をセットで書くと読み手が追跡できます。計画書の各欄の埋め方は出店計画書の書き方にまとめています。現地調査の段取りは立地調査の方法を参照してください。

この計画で分からないこと

  • 区域の内側でも人口が増えるとは限らない。誘導区域は市町村の方針であって、人口の予測値ではありません。実際の商圏人口はメッシュ統計など実測のデータで別に押さえる必要があります
  • 区域外の出店を禁じる仕組みではない。第88条・第108条はいずれも届出と勧告までで、許可制ではありません。ただし勧告に従わない場合の公表規定はあります
  • 市町村ごとに中身が違う。誘導施設の種類も区域の広さも、計画ごとに違います。他市の事例をそのまま当てはめられません
  • 本記事は策定済み市町村の数を書いていません。公表件数の一次情報を今回取得できなかったためで、件数が必要な場合は国土交通省都市局のページと、対象市町村の公表資料を直接ご確認ください

都市計画の基礎的な調査データそのものは都市計画基礎調査で扱っています。区域の線引きと合わせて読むと、市町村がどの根拠でその線を引いたかが追えます。

よくある質問

Q. 立地適正化計画はすべての市町村にありますか。
A. ありません。都市再生特別措置法第81条第1項は「市町村は、単独で又は共同して……作成することができる」という書き方で、作成は任意です。また対象は都市計画法第4条第2項に規定する都市計画区域内の区域に限られます。候補地の市町村に計画があるかどうかは、その市町村の都市計画担当課の公表資料で確認してください。

Q. 居住誘導区域の外に出店すると建てられないのですか。
A. 建てられないわけではありません。第88条が求めているのは届出です。居住誘導区域外で、住宅等の建築の用に供する目的で行う開発行為や、住宅等の新築・改築・用途変更を行おうとする者は、着手する日の30日前までに市町村長に届け出る必要があります。政令が定める基準は3戸、規模は0.1ヘクタールです。市町村長は誘導に支障があると認めるときは勧告ができ、一定の区域については勧告に従わなかった旨を公表できます。

Q. 誘導施設とは具体的に何ですか。
A. 都市機能誘導区域ごとに、その立地を誘導すべき都市機能増進施設として市町村が計画に書いたものです。都市機能増進施設は法律上「医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の共同の福祉又は利便のため必要な施設であって、都市機能の増進に著しく寄与するもの」と定義されています。具体的にどの用途・規模が誘導施設になるかは市町村の計画次第なので、候補地の計画本体で確認する必要があります。

Q. 店を閉めるときにも手続きが要ると聞きました。
A. 誘導施設に該当する場合は要ります。第108条の2第1項は、都市機能誘導区域内でその区域に係る誘導施設を休止または廃止しようとする者に、休止・廃止しようとする日の30日前までの届出を義務づけています。届出を受けた市町村長は、建築物を有効に活用する必要があると認めるときは、建築物の存置その他の必要な助言または勧告ができるとされています。

Q. 大規模小売店舗立地法の届出とは別ですか。
A. 別の制度です。大規模小売店舗立地法は店舗面積1,000平方メートル超の大規模小売店舗について、駐車場・騒音・廃棄物など周辺の生活環境への配慮を都道府県等に届け出る仕組みです。立地適正化計画の届出は都市機能や居住の誘導が目的で、届出先は市町村長です。目的も根拠法も届出先も違うため、両方に該当する出店では両方の手続きが必要になります。