出店の候補地が決まり、坪数と賃料まで詰めた段階で「駐車場を何台つけないといけないのか」が後から出てくることがあります。募集図面には書かれておらず、仲介会社も把握していないことが珍しくありません。

これは駐車場の附置義務と呼ばれる制度です。厄介なのは、根拠が法律にありながら、実際の台数を決めているのは自治体の条例だという点です。全国一律の数字は存在しません。

この記事では、駐車場法と駐車場法施行令の条文をもとに、附置義務がかかる場所・規模・用途と、居抜き出店で見落としやすい用途変更の規定を整理します。商圏分析の全体像は商圏分析の完全ガイドをご覧ください。

結論

駐車場法第20条は「地方公共団体は……条例で……定めることができる」という規定で、法律そのものは駐車台数を決めていません。かかるのは駐車場整備地区・商業地域・近隣商業地域と、条例で定めた周辺の地区。規模の下限は延べ面積2,000平方メートルですが、劇場・飲食店・店舗・事務所など政令が挙げる「特定用途」に使う部分が条例で定める規模以上なら、建物全体が2,000平方メートル未満でも対象になります。台数を知るには、その市区町村の条例を直接見るしかありません。

この記事の要点
  • 駐車場法第20条は「条例で……定めることができる」という規定。条例が無い自治体では附置義務は生じない
  • かかる場所は駐車場整備地区・商業地域・近隣商業地域(第20条第1項)と、条例で定めた周辺の地区(同条第2項)
  • 規模の下限は延べ面積2,000平方メートル。ただし特定用途に使う部分が条例の規模以上なら、全体が2,000平方メートル未満でも対象
  • 特定用途は政令で25の用途が列挙され、飲食店・百貨店その他の店舗・事務所・共同住宅まで含まれる
  • 用途変更+大規模の修繕・模様替でも義務がかかる(第20条の2)。居抜き出店で見落としやすい
  • 台数の算定式は法律にも政令にも無い。自治体の条例が唯一の答え

法律は台数を決めていない

根拠は駐車場法(昭和32年法律第106号)の第五章「建築物における駐車施設の附置及び管理」です。その第20条第1項は、次のように始まります。

「地方公共団体は、駐車場整備地区内又は商業地域内若しくは近隣商業地域内において、延べ面積が二千平方メートル以上で条例で定める規模以上の建築物を新築し……ようとする者に対し、条例で、その建築物又はその建築物の敷地内に自動車の駐車のための施設(以下「駐車施設」という。)を設けなければならない旨を定めることができる。」(駐車場法第20条第1項前段)

読みどころは「定めることができる」です。義務を課しているのは法律ではなく、自治体が制定する条例です。したがって次の2つが同時に成り立ちます。

  • 条例を持たない自治体では、駐車場法を根拠とする附置義務は生じない
  • 条例を持つ自治体でも、必要な台数・算定式・除外規定はその自治体ごとに違う

「駐車場法では何台必要ですか」という問い自体が成立しません。法律が定めているのは条例を作ってよい範囲の外枠だけで、中身は条例にあります。同じチェーンの同じ業態でも、市が変われば必要台数が変わるのはこのためです。

なお第20条の3は、条例で設けられた駐車施設について「その設置の目的に適合するように管理しなければならない旨」も条例で定められるとしています。設置して終わりではなく、別用途への転用が制限されることがあるという意味です。

かかる場所:用途地域で最初に分かれる

第20条は、対象の場所を2段構えで書いています。

条項対象の場所規模の下限
第20条第1項駐車場整備地区内、商業地域内、近隣商業地域内延べ面積2,000平方メートル以上で条例が定める規模以上
第20条第2項上記の周辺の都市計画区域内で条例が定める地区、または自動車交通の状況がそれに準ずる地域・自動車交通がふくそうすることが予想される地域で条例が定める地区特定部分の延べ面積が2,000平方メートル以上で条例が定める規模以上

つまり最初のふるいは用途地域です。候補地が商業地域か近隣商業地域なら第1項の射程に入り、そうでなければ第2項の「条例で定める地区」に指定されているかどうかを見ることになります。用途地域の調べ方は用途地域の調べ方。無料で確認する3経路にまとめています。

もう一方の「駐車場整備地区」は都市計画で定められる地区です。駐車場法施行令第1条は、駐車場整備地区を定めることができる特別用途地区として、小売店舗・事務所・娯楽レクリエーション施設・流通業務施設その他自動車の駐車需要を生じさせる程度の大きい特別の業務の用に供する施設に係るものを挙げています。特別用途地区そのものの位置づけは特別用途地区とは。特定用途制限地域との違いで扱っています。

第2項の書きぶりで注意したいのは、商業地域から外れれば安全とは限らないことです。条文は「自動車交通がふくそうすることが予想される地域内で条例で定める地区」まで許容しているため、幹線道路沿いの郊外店でも条例で地区指定されていれば対象になります。用途地域だけを見て判断を打ち切らないほうがよい箇所です。

かかる規模:2,000平方メートルの読み方

「2,000平方メートル未満だから関係ない」と読みたくなりますが、条文には続きがあります。第20条第1項の後段です。

「劇場、百貨店、事務所その他の自動車の駐車需要を生じさせる程度の大きい用途で政令で定めるもの(以下「特定用途」という。)に供する部分のある建築物で特定用途に供する部分(以下「特定部分」という。)の延べ面積が……条例で定める規模以上のものを新築し……ようとする者に対しては、当該新築又は増築後の当該建築物の延べ面積が二千平方メートル未満である場合においても、同様とする。」(駐車場法第20条第1項後段)

建物全体が2,000平方メートルに届かなくても、特定用途に使う部分が条例の定める規模を超えていれば対象になります。2,000平方メートルは全体規模の下限であって、免除ラインではありません。

もう1つ、延べ面積の数え方に第3項があります。

「前二項の延べ面積の算定については、同一敷地内の二以上の建築物で用途上不可分であるものは、これを一の建築物とみなす。」(駐車場法第20条第3項)

1棟ずつでは小さくても、同じ敷地に用途上不可分な建物が複数あれば合算されます。店舗棟と倉庫棟、本館と別館のような構成では、棟ごとの面積で判断すると読み違えます。

特定用途は25。ほとんどの店舗が入る

「特定用途」の中身は駐車場法施行令第18条が定めています。列挙されているのは次の25の用途です。

区分政令第18条が挙げる用途
興行・集会劇場、映画館、演芸場、観覧場、放送用スタジオ、公会堂、集会場、展示場、結婚式場、斎場
宿泊・飲食・遊興旅館、ホテル、料理店、飲食店、待合、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、舞踏場
遊技・運動遊技場、ボーリング場、体育館
商業・業務・その他百貨店その他の店舗、事務所、病院、卸売市場、倉庫、工場、共同住宅

実務で効くのは「百貨店その他の店舗」「飲食店」の2つです。この書き方だと、業種を問わず物販店舗と飲食店は特定用途に入ります。小売・飲食の出店で「うちは百貨店ではないから対象外」という読み方はできません。事務所と共同住宅も入っているため、店舗併用の計画では特定部分の取り方そのものが検討事項になります。

逆に、この列挙に無いものは特定用途ではありません。条文は「その他の自動車の駐車需要を生じさせる程度の大きい用途で政令で定めるもの」と書いており、政令で定めたものに限られるという構造だからです。ただし特定用途に当たらなくても、第20条第1項前段の延べ面積2,000平方メートル以上のルートで対象になる可能性は残ります。

居抜き出店でかかる用途変更の規定

新築だけを見ていると落とすのが第20条の2です。

「地方公共団体は、前条第一項の地区若しくは地域内又は同条第二項の地区内において、建築物の部分の用途の変更(以下「用途変更」という。)で、当該用途変更により特定部分の延べ面積が一定規模……以上となるもののために大規模の修繕又は大規模の模様替(建築基準法第二条第十四号又は第十五号に規定するものをいう。……)をしようとする者……に対し、条例で、その建築物又はその建築物の敷地内に駐車施設を設けなければならない旨を定めることができる。」(駐車場法第20条の2第1項)

条文を分解すると、義務がかかる条件は2つが揃ったときです。

  • 用途変更によって特定部分の延べ面積が一定規模以上になる(または、すでに一定規模以上の建物で特定部分が増える)
  • そのために大規模の修繕または大規模の模様替を行う

「大規模の修繕」「大規模の模様替」は駐車場法が独自に定義した語ではなく、建築基準法第2条第十四号・第十五号の定義を引いています。したがって内装だけの改修で済む居抜き出店と、主要構造部に及ぶ改修を伴う出店とでは、扱いが変わりうるということになります。

ここが実務で見落とされやすいのは、建物を建てないのに義務が発生する形だからです。事務所だったフロアを飲食店にする、倉庫を店舗にするといった計画では、面積要件と工事の内容の両方を条例に照らす必要があります。第20条の3第2項により、延べ面積の算定に第20条第3項(同一敷地内の用途上不可分な建物の合算)が準用される点も同じです。

出店計画の段階でどこまで詰めるかは出店計画書の書き方。商圏データで埋める3欄に整理しています。附置義務は商圏の良し悪しとは別軸の制約で、後から出てくるほど計画のやり直しが大きくなる項目です。

出店前に調べる手順

法律と政令が決めているのは枠だけなので、実際の台数は自治体に当たることになります。順序としては次の3段です。

手順見るもの分かること
1. 用途地域と地区指定市区町村の都市計画情報(用途地域の調べ方商業地域・近隣商業地域か、駐車場整備地区か、条例の指定地区か
2. 条例の有無と名称その市区町村の例規集(「駐車場条例」「駐車施設の附置に関する条例」等)そもそも義務があるか。ある場合の対象規模と算定式
3. 算定と緩和条例本文と規則・要綱用途別の原単位、隔地駐車場・集約駐車場の可否、緩和規定

2つめの条例名は自治体によって表記が揺れます。「駐車場条例」で見つからないときは「附置」「駐車施設」で例規集内を検索すると当たります。3つめの算定式は、多くの場合用途ごとの面積を原単位で割る形で書かれていますが、原単位そのものが自治体ごとに違うので、他市の数字を流用しないでください。

もう1点、混同されやすい制度に大規模小売店舗立地法があります。こちらは店舗面積が一定を超える小売店舗の出店時に、駐車需要を含む周辺環境への配慮を届出させる仕組みで、駐車場法の附置義務とは根拠法も手続も別です。両方が同時にかかる出店もあります。大店立地法側の届出で何が読めるかは大規模小売店舗立地法とは?届出でわかる競合出店にまとめています。

実際に必要な台数が読めたら、それが商圏の想定来店数と釣り合っているかを見ることになります。来店の想定は一次商圏・二次商圏とは?距離の目安と決め方円商圏と実勢商圏はどれだけズレるかの考え方が使えます。条例の最低台数は下限であって適正台数ではないため、車での来店比率が高い業態では条例の台数だけで足りるとは限りません。

出典:駐車場法(昭和32年法律第106号)第20条・第20条の2・第20条の3、駐車場法施行令(昭和32年政令第340号)第1条・第18条。条文は e-Gov 法令検索の法令データ(2026年9月7日取得)によります。実際の義務・台数は各市区町村の条例が定めるため、出店にあたっては必ず所管部署にご確認ください。

よくある質問

駐車場法では何台の駐車場が必要ですか。

法律は台数を定めていません。第20条は「地方公共団体は……条例で……定めることができる」という規定で、台数の算定式は条例側にあります。政令(駐車場法施行令)にも算定式はありません。台数を知るには、出店先の市区町村の条例を直接確認する必要があります。

延べ面積が2,000平方メートル未満なら附置義務はかかりませんか。

かかることがあります。第20条第1項後段は、特定用途に供する部分の延べ面積が条例で定める規模以上であれば「当該新築又は増築後の当該建築物の延べ面積が二千平方メートル未満である場合においても、同様とする」と定めています。飲食店や店舗は政令第18条の特定用途に含まれるため、小規模でも条例の規模要件次第で対象になります。

居抜きで内装だけ変える場合も対象ですか。

第20条の2は、用途変更により特定部分の延べ面積が一定規模以上となるもののために大規模の修繕または大規模の模様替をしようとする者を対象としています。この2語は建築基準法第2条第十四号・第十五号の定義によるため、工事が主要構造部に及ぶかどうかで扱いが変わりえます。面積要件と工事内容の両方を、条例に照らして確認してください。

敷地内に建物が2棟ある場合、面積はどう数えますか。

第20条第3項が「同一敷地内の二以上の建築物で用途上不可分であるものは、これを一の建築物とみなす」と定めています。用途上不可分であれば合算です。第20条の2の用途変更の場合にも、同条第2項でこの規定が準用されます。

商業地域でなければ関係ありませんか。

いいえ。第20条第2項は、駐車場整備地区・商業地域・近隣商業地域の周辺の都市計画区域内の地域で条例が定める地区や、自動車交通の状況がそれに準ずる地域、自動車交通がふくそうすることが予想される地域で条例が定める地区も対象にできるとしています。用途地域だけでは判定が終わらないため、条例の地区指定まで見る必要があります。

大規模小売店舗立地法の駐車台数と同じものですか。

別の制度です。駐車場法の附置義務は、駐車場法第20条を根拠に自治体の条例が課す義務です。大規模小売店舗立地法は、一定規模を超える小売店舗の出店にあたり周辺の生活環境への配慮を届け出させる仕組みで、根拠法も手続も異なります。両方が同時にかかる出店もあるため、どちらか一方を確認して終わりにしないでください。