競合店調査というと、まず現地に行って売場を歩き、駐車場の台数を数え、レジの回転を見る——という手順を思い浮かべる方が多いと思います。それ自体は必要な作業ですが、現地で数えようとしている項目のうち、いくつかは法律に基づいて公表されています。店舗面積、駐車場の収容台数、駐輪場の台数、開店時刻と閉店時刻、そして開店予定日まで含まれます。

この記事では、まず机上で確定できることを一次資料で押さえ、そのうえで現地でしか取れないものを切り分けます。あわせて「どこまでやると問題になるのか」という線引きにも、条文を挙げて触れます。商圏分析の全体像から確認したい方は商圏分析のやり方 完全ガイドを先にご覧ください。

この記事の要点
  • 店舗面積の合計が1,000平方メートルを超える小売店舗は、大規模小売店舗立地法の届出対象。届出内容は都道府県が公告し、4か月間縦覧される
  • 届出には店舗面積・駐車場の収容台数・開店閉店時刻・新設をする日が含まれる。新設は届出の日から8か月を経過した後なので、競合の出店は開店の8か月以上前に公になる
  • 千葉県の令和8年5月届出分を実際に開くと、店舗名・所在地・建物設置者・小売業者・店舗面積・駐車場台数・開店閉店時刻が1行に並んでいた(43列)
  • 売上・客数・価格・品揃えは公表されない。ここが現地調査と、公的統計による推計の出番
  • 店内での通常の観察は問題にならないが、退去を求められた後も居座れば刑法第130条の対象になりうる

競合店調査で欲しい項目を3つに分ける

競合店調査が非効率になる最大の理由は、取れ方の違う項目をひとまとめに「現地で見るもの」として扱ってしまうことです。実際には次の3つに分かれます。

区分項目の例取り方
公表されている店舗面積、駐車場・駐輪場の収容台数、荷さばき施設の面積、開店時刻・閉店時刻、開店予定日、建物設置者、小売業者都道府県の大規模小売店舗立地法の届出公告(1,000平方メートル超の店舗)
統計から推計できる商圏内の同業の軒数、従業者数、地域全体の販売規模経済センサス、家計調査などの公的統計
現地でしか取れない価格、品揃え、客層、時間帯別の混雑、レジ台数、売場の作り、什器の新旧実地の観察

2番目については経済センサスの事業所数とは?競合の数え方家計調査で商圏の市場規模を出す方法で扱っています。この記事は1番目を軸に、3番目との切り分けを整理します。

大規模小売店舗立地法で公表されるもの

根拠は大規模小売店舗立地法(平成10年法律第91号)です。同法第2条第1項は「店舗面積」を「小売業(飲食店業を除くものとし、物品加工修理業を含む。以下同じ。)を行うための店舗の用に供される床面積」と定義し、第2項で、建物内の店舗面積の合計が基準面積を超えるものを「大規模小売店舗」としています。基準面積は施行令第2条により1,000平方メートルです。

この規模の店舗を新設する者は、法第5条第1項により、次の事項を都道府県に届け出なければなりません。

  1. 大規模小売店舗の名称及び所在地
  2. 大規模小売店舗を設置する者及び当該大規模小売店舗において小売業を行う者の氏名又は名称及び住所(法人にあっては代表者の氏名)
  3. 大規模小売店舗の新設をする日
  4. 大規模小売店舗内の店舗面積の合計
  5. 大規模小売店舗の施設の配置に関する事項であって、経済産業省令で定めるもの
  6. 大規模小売店舗の施設の運営方法に関する事項であって、経済産業省令で定めるもの

5番目と6番目の「経済産業省令で定めるもの」の中身は、施行規則第3条に書かれています。ここが競合店調査で一番効く部分です。

条項届け出る事項
施行規則 第3条第1項(配置)駐車場の位置及び収容台数/駐輪場の位置及び収容台数/荷さばき施設の位置及び面積/廃棄物等の保管施設の位置及び容量
施行規則 第3条第2項(運営方法)小売業を行う者の開店時刻及び閉店時刻/来客が駐車場を利用することができる時間帯/駐車場の自動車の出入口の数及び位置/荷さばき施設において荷さばきを行うことができる時間帯

さらに届出には添付書類が付きます(法第5条第2項、施行規則第4条)。全12項目のうち、商圏の検討に関係が深いのは次のあたりです。

  • 主として販売する物品の種類
  • 建物の位置及びその建物内の小売業を行うための店舗の用に供される部分の配置を示す図面
  • 必要な駐車場の収容台数を算出するための来客の自動車の台数等の予測の結果及びその算出根拠
  • 駐車場の自動車の出入口の形式又は来客の自動車の方向別台数の予測の結果等
  • 平均的な状況を呈する日における等価騒音レベルの予測の結果及びその算出根拠

3番目は、出店する側が自ら作った来客台数の予測とその算出根拠です。そして法第5条第3項により、都道府県は届出があったときは速やかに公告するとともに、「当該届出及び前項の添付書類を公告の日から四月間縦覧に供しなければならない」とされています。縦覧に行けば添付書類まで見られる、という制度です。

加えて法第7条第1項は、届出をした者に対し、届出の日から2か月以内に、店舗の所在地の属する市町村内で届出内容を周知させるための説明会を開催することを義務づけています。説明会の日時と場所は、開催予定日の1週間前までに公告されます(同条第2項)。

実際の公表資料を開いてみる(千葉県)

制度の説明だけでは実感が湧かないので、実際の資料を開きます。千葉県は「大規模小売店舗立地法に基づく届出状況(届出の概要及び手続の状況)」を年度別のExcelとPDFで公開しています。2026年8月20日に令和8年度分のExcel(26,643バイト)を取得したところ、ページの更新日は令和8年7月15日、内容は令和8年5月31日現在でした。

ファイルは月ごとのシートに分かれており、令和8年5月届出分のシートは43列あります。列見出しは「区分/店舗名/所在地/届出日/公告日・縦覧開始日/縦覧終了日/市町村・住民等意見公告日/県意見公告日/県意見通知日/新設日/変更・廃止日/建物設置者/小売業者/店舗面積の合計(平方メートル)/駐車場の収容台数(台)/駐輪場の収容台数(台)/荷さばき施設の面積(平方メートル)/廃棄物保管施設の容量(立方メートル)/主な開店時刻/主な閉店時刻/主な駐車場の利用可能な時間帯/主な駐車場の出入り口の数/主な荷さばき施設の作業可能な時間帯」という並びです(変更届の場合は「新設・変更前」「変更後」の2列組)。

実際に入っている行を2件そのまま挙げます。

タイヨー成田店(新設・法第5条第1項)|成田市土屋字新着1308番1ほか|届出日 令和8年4月1日/公告日・縦覧開始日 令和8年4月17日/縦覧終了日 令和8年8月17日/新設日 令和8年12月2日|建物設置者 京成電鉄株式会社/小売業者 株式会社タイヨー|店舗面積 1,844平方メートル|駐車場 65台/駐輪場 53台/荷さばき施設 144平方メートル|開店 08:00・閉店 23:00/駐車場の利用可能時間帯 07:30〜23:30/駐車場の出入口 5か所

薬王堂千葉長生店(新設・法第5条第1項)|長生郡長生村本郷字大菅7345番ほか|届出日 令和8年5月27日/新設日 令和9年1月28日|建物設置者・小売業者ともに株式会社薬王堂|店舗面積 1,240平方メートル|駐車場 47台/駐輪場 5台/荷さばき施設 40平方メートル|開店 07:00・閉店 00:00/駐車場の利用可能時間帯 06:30〜00:30/駐車場の出入口 2か所

出典:千葉県「大規模小売店舗立地法に基づく届出状況(届出の概要及び手続の状況)」令和8年度届出概要及び手続状況(2026年8月20日取得)

店舗面積1,844平方メートルで駐車場65台、店舗面積1,240平方メートルで駐車場47台。単位面積あたりの駐車台数まで比較できる粒度です。開店時刻07:00・閉店00:00という運営条件も、競合が狙っている客層の手がかりになります。

同じ資料には既存店の変更届も並びます。たとえば施設変更の届出では「店舗面積の合計」「駐車場の収容台数」の変更前と変更後が両方載るため、既存の競合が売場や駐車場を増減させたこと自体を追えることになります。

なお公開の形式は都道府県ごとに違います。東京都は「届出状況一覧(平成12年度〜)」というページで一覧を公開しており(2026年8月20日にHTTP 200で確認)、経済産業省も全国の届出状況のページを持っています。まずは出店を検討している都道府県の名前と「大規模小売店舗立地法 届出状況」で探すのが早い経路です。

開店の8か月以上前に分かる

競合店調査で本当に価値があるのは、すでに建っている店ではなくこれから建つ店です。ここで効いてくるのが法第5条第4項です。

大規模小売店舗立地法 第5条第4項:「第一項の規定による届出をした者は、当該届出の日から八月を経過した後でなければ、当該届出に係る大規模小売店舗の新設をしてはならない。」

つまり1,000平方メートル超の店舗は、開店の8か月以上前に届出が出て、公告されているということです。前節のタイヨー成田店は届出日が令和8年4月1日、新設日が令和8年12月2日で、間隔は8か月と1日でした。薬王堂千葉長生店は令和8年5月27日届出・令和9年1月28日新設で、8か月と1日です。実務上、多くの案件が下限ぎりぎりに設定されていることが読み取れます。

既存店の施設変更についても、法第6条第4項が同様に「当該届出の日から八月を経過した後でなければ、当該届出に係る変更を行ってはならない」と定めています(経済産業省令で定める軽微な変更を除く)。新規出店も、既存競合の増床も、8か月前に見えるということです。

自社の出店候補地を決める段階でこの一覧を確認しておけば、開業した途端に隣接地へ大型店が開く、という事態は避けられます。候補地まわりの人口を数える手順は商圏人口の調べ方。無料で算出する4ステップにまとめています。

1,000平方メートル以下の店はどうするか

コンビニエンスストア、ドラッグストアの小型店、飲食店、美容室など、店舗面積が1,000平方メートル以下の業態はこの届出の対象外です。ここは公表資料では埋まりません。代わりに次の順で押さえます。

1. 軒数を統計で確定する

経済センサスの事業所数を産業小分類で絞り、市区町村単位で数えます。手順は経済センサスの事業所数とは?競合の数え方のとおりです。「何軒あるか」は、地図を見て数えるより統計のほうが確実です。

2. 位置を地図に落とす

統計は軒数までで、位置は持っていません。位置は地図サービスや自社の調査で補い、商圏の重なりを見ます。円商圏と徒歩・車の到達圏がずれる理由は円商圏と実勢商圏がずれる理由で扱っています。

3. 商圏の需要側を統計で押さえる

供給(競合)の情報が薄いぶん、需要側の精度を上げます。商圏人口、昼夜間人口、世帯の支出構成の3点が基本です。昼間人口と夜間人口の調べ方もあわせてご覧ください。

建物の規模だけを知りたい場合、建築計画概要書という別の経路もあります。建築確認を受けた建物について、特定行政庁が閲覧に供している書類です。ただし閲覧の運用は自治体ごとに異なり、対象や手数料も一律ではないため、この記事では「そういう制度がある」ことの紹介にとどめます(本記事では実際の閲覧までは行っていません)。

現地でしか取れないもの

ここまでで、規模・設備・営業時間・開店日は机上で埋まります。逆に、公表資料にも公的統計にも出てこないのは次の項目です。

  • 価格と品揃え:主力商品の売価、PB比率、欠品の状況
  • 客数と客層:時間帯別の入店数、年齢層、来店手段(徒歩か自動車か)
  • 売場の作り:レジ台数、通路幅、什器の新旧、改装からの経過
  • 運営の実態:レジの待ち行列、従業員数、品出しの時間帯

ここで注意したいのは、現地調査は「1回行って全部見る」ものではないという点です。時間帯別の客数は平日と休日、朝と夕で別の顔になります。届出資料から開店時刻と閉店時刻が分かっているのであれば、観察する時間帯をあらかじめ設計できます。開店直後と閉店前を含む3〜4回に分けるだけで、1回だけの訪問より情報量は大きく変わります。

通行量そのものを数える方法は店前通行量調査のやり方、道路側の交通量を公的データで押さえる方法は道路交通センサスの調べ方で扱っています。

やってよいことと、そうでないこと

競合店調査は通常の営業活動の一部であり、店に入って商品や価格を見ること自体を禁じる法律はありません。一方で、線を越えると別の話になります。判断が分かれやすいのは次の2点です。

1つ目は、その場所にいてよいかどうかです。店舗や駐車場は多くの場合が私有地であり、施設の管理者には退去を求める権限があります。刑法(明治40年法律第45号)第130条は「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する」と定めています。退去を求められたら従う、というのが最低限の線です。営業時間外の敷地内への立入や、他人の駐車場での長時間の定点観測は、求められる前から避けるべき領域に入ります。

2つ目は、情報の取り方です。店頭で誰にでも見える価格や品揃えを記録することと、相手方の従業員から本来外に出ない情報を引き出すことは別です。後者は不正競争防止法の営業秘密の議論に入ってきます。身分を偽って社員に接触する、取引先を装って資料を求める、といった手法は、調査というより別の問題です。

実務としては、公表資料と公的統計で埋まる範囲を先に確定し、現地では公表されていないものだけを、公開されている場所から観察するという順序にすると、線を越える必要がそもそも生じません。この記事の構成自体がその順序になっています。

この記事の結論

店舗面積・駐車場台数・開店閉店時刻・開店予定日は、1,000平方メートル超の店舗であれば都道府県の公告で取れます。しかも新設は届出の日から8か月を経過した後なので、開店の8か月以上前に分かります。現地に行くのは、価格・客数・売場の作りなど、公表されていない項目だけに絞るのが効率的です。

よくある質問

競合店調査は違法になりますか?

店舗に入って商品や価格を見ること自体を禁じる法律はなく、通常の営業活動の一部です。ただし場所と手段には線があります。刑法第130条は、要求を受けたにもかかわらず退去しなかった者を処罰の対象としており、店舗や駐車場は多くが私有地です。退去を求められたら従うこと、営業時間外の敷地内に立ち入らないこと、身分を偽って従業員から情報を引き出さないことが基本になります。公表資料と公的統計で埋まる範囲を先に確定しておけば、そもそも際どい手段を取る必要がありません。

競合の店舗面積はどこで分かりますか?

店舗面積の合計が1,000平方メートルを超える店舗なら、都道府県が公告している大規模小売店舗立地法の届出情報で分かります。店舗面積は法第5条第1項第4号の届出事項です。基準面積の1,000平方メートルは施行令第2条で定められています。都道府県の「大規模小売店舗立地法 届出状況」のページで、年度別の一覧が公開されているのが一般的な形です。

競合の駐車場台数や営業時間まで公表されているのですか?

されています。施行規則第3条第1項が駐車場・駐輪場の位置と収容台数、荷さばき施設の位置と面積、廃棄物等の保管施設の位置と容量を届出事項とし、同条第2項が開店時刻・閉店時刻、来客が駐車場を利用できる時間帯、駐車場の自動車の出入口の数及び位置、荷さばきの時間帯を届出事項としています。千葉県の令和8年度の一覧では、これらが1店舗1行の表として並んでいました。

競合の新規出店はいつ分かりますか?

1,000平方メートル超の店舗であれば、開店の8か月以上前です。法第5条第4項が「当該届出の日から八月を経過した後でなければ、当該届出に係る大規模小売店舗の新設をしてはならない」と定めているためです。実際、千葉県の令和8年度の一覧では、届出日と新設日の間隔が8か月と1日という案件が複数ありました。既存店の増床なども法第6条第4項で同様に8か月の待機が課されています。

縦覧はいつまでできますか?

公告の日から4か月間です。法第5条第3項が「当該届出及び前項の添付書類を公告の日から四月間縦覧に供しなければならない」と定めています。縦覧では届出書だけでなく添付書類も見られ、その中には「必要な駐車場の収容台数を算出するための来客の自動車の台数等の予測の結果及びその算出根拠」(施行規則第4条第1項第4号)が含まれます。都道府県が公開している一覧表には結果の数値だけが載るため、算出根拠まで確認したい場合は縦覧期間内に動く必要があります。

コンビニや飲食店の競合情報も同じように取れますか?

取れません。大規模小売店舗立地法の対象は店舗面積の合計が1,000平方メートルを超える店舗であり、コンビニエンスストアや飲食店の多くは対象外です。また法第2条第1項の「小売業」の定義は飲食店業を除いているため、面積が大きくても飲食店単体は対象になりません。この領域は、経済センサスによる軒数の把握と現地調査の組み合わせで埋めることになります。

説明会の情報も使えますか?

開催の事実と日時・場所は公告されます。法第7条第1項が届出者に対し、届出の日から2か月以内に、店舗の所在地の属する市町村内で届出内容を周知させるための説明会の開催を義務づけており、同条第2項が開催予定日の1週間前までの公告を求めています。説明会は周辺の生活環境に関する周知が目的であり、商圏や売上の説明の場ではない点には留意してください。

出典:大規模小売店舗立地法(平成10年法律第91号)第2条・第5条・第6条・第7条/大規模小売店舗立地法施行令(平成10年政令第327号)第1条・第2条/大規模小売店舗立地法施行規則(平成11年通商産業省令第62号)第2条・第3条・第4条/刑法(明治40年法律第45号)第130条(いずれもe-Gov法令検索の法令APIから現行版を取得し、条文は原文から引用)/千葉県「大規模小売店舗立地法に基づく届出状況(届出の概要及び手続の状況)」令和8年度届出概要及び手続状況(Excel・26,643バイト。ページ更新日 令和8年7月15日、内容は令和8年5月31日現在)/東京都産業労働局「届出状況一覧(平成12年度〜)」/経済産業省「大規模小売店舗立地法(大店立地法)の届出状況について」。いずれも2026年8月20日に取得し、Excelは中身を開いて列と行を確認したうえで記載しています。公開形式・更新頻度は都道府県ごとに異なるため、必ず原典をご確認ください。