出店の条件を詰めていくと、賃料や坪数の話は早い段階で固まるのに、看板だけ最後まで宙に浮いていることがあります。内装業者は「たぶん出せます」と言い、貸主は「前のテナントも出していました」と言う。ところが工事の直前になって、袖看板の面積が条例の上限を超えていることが分かる。

看板は屋外広告物条例という別系統のルールで規制されています。用途地域や建築確認とは別の手続で、しかも規制の中身は法律ではなく自治体の条例に書かれています

この記事では屋外広告物法の条文をもとに、この仕組みが何を都道府県や市に委ねているのか、出店側は何をどの順で確認すればよいのかを整理します。商圏分析の全体像は商圏分析の完全ガイドをご覧ください。

結論

屋外広告物法は、規制の枠だけを定めて中身を条例に委ねる法律です。第3条で禁止できる地域と物件を、第4条で許可制にできることを、第5条で形状・面積・色彩・意匠の基準を定められることを規定していますが、いずれも「条例で定めるところにより」と書かれており、数値は法律側にありません。つまり看板が出せるかどうかは、出店地の自治体の条例を見るまで分かりません。しかも見るべき条例は都道府県とは限らず、特別区・指定都市・中核市・景観行政団体である市町村では、その自治体の条例が適用されます。

この記事の要点
  • 法律は枠だけ。面積・高さ・色彩の数値はすべて条例の側にある(第3条〜第5条)
  • 屋外広告物の定義が広い。壁面に直接表示したものも、のぼりも、はり紙も対象(第2条第1項)
  • 禁止できる地域には都道府県が指定する地域・場所が含まれる(第3条第1項第4号・第6号)。用途地域だけでは判定が終わらない
  • 見るべき条例は都道府県とは限らない。特別区・指定都市・中核市・景観行政団体である市町村の特例がある(第26条〜第28条)
  • 違反すると除却を命じられ、従わなければ行政代執行で費用を徴収される(第7条第3項)
  • はり紙・広告旗・立看板等は、条件を満たせば命令を経ずに除却できる(第7条第4項)
  • 看板業者は屋外広告業の登録を受けている必要がある。登録の有効期間は5年(第9条・第10条第2項第1号)

法律は「条例で定めるところにより」しか書いていない

屋外広告物法は全34条の短い法律です。第1条は目的をこう定めています。

「この法律は、良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために、屋外広告物の表示及び屋外広告物を掲出する物件の設置並びにこれらの維持並びに屋外広告業について、必要な規制の基準を定めることを目的とする。」(第1条)

「必要な規制の基準を定める」という書き方です。規制そのものではありません。実際、規制を作る3つの条文はいずれも都道府県に委ねる形になっています。

条文何ができると書いてあるか
第3条条例で定めるところにより、一定の地域・場所での表示・設置を禁止することができる
第4条条例で定めるところにより、知事の許可を受けなければならないとすることその他必要な制限ができる
第5条条例で、広告物の形状、面積、色彩、意匠その他表示の方法の基準や掲出物件の形状その他設置の方法の基準、維持の方法の基準を定められる

面積の上限も、高さも、色彩の制限も、法律には1つも書かれていません。「屋外広告物法を調べる」ことに実務的な意味はほとんどなく、調べるべきは条例です。この構造は、必要台数を条例が定める駐車場の附置義務と同じ形です。

第6条は、景観法第8条第1項の景観計画に広告物の制限に関する事項が定められている場合、第3条から第5条までの条例は「当該景観計画に即して定めるものとする」としています。景観計画がある区域では、条例の内容がその計画に沿って作られます。

看板の定義が広い。壁の文字ものぼりも入る

何が規制の対象になるかは第2条第1項の定義です。

「この法律において『屋外広告物』とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。」(第2条第1項)

3つの要素に分解できます。

要素条文の文言読み方
期間常時又は一定の期間継続して常設でなくてもよい。期間限定ののぼりやはり紙も入る
場所屋外で公衆に表示される店内の掲示は対象外だが、ガラス面に外向きに貼るものは屋外への表示になりうる
形態看板、立看板、はり紙及びはり札/広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの/これらに類するもの独立した看板だけでなく、建物に直接表示したものを明記。「これらに類するもの」で受け皿も広い

「建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの」という一節が実務では効きます。壁面に文字を直接描いた場合も、袖看板を取り付けた場合も、同じ屋外広告物です。設置か表示かで扱いが分かれる作りにはなっていません。

第2条第2項は「屋外広告業」を「屋外広告物の表示又は広告物を掲出する物件の設置を行う営業」と定義しています。以降の条文では、広告物そのものを「広告物」、それを掲出する物件を「掲出物件」と呼び分けています。ポールや取付金具のような物件の側にも別に規制がかかる構造です。

禁止される地域と物件は用途地域だけで決まらない

第3条第1項は、禁止できる地域・場所を6号に分けて列挙しています。

地域・場所(条文の要旨)
第1号第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、田園住居地域、景観地区、風致地区、伝統的建造物群保存地区
第2号文化財保護法により指定された建造物の周囲で都道府県が定める範囲内にある地域ほか
第3号森林法第25条第1項第11号の目的で保安林として指定された森林のある地域
第4号道路、鉄道、軌道、索道又はこれらに接続する地域で、良好な景観又は風致を維持するために必要があるものとして当該都道府県が指定するもの
第5号公園、緑地、古墳又は墓地
第6号前各号のほか、当該都道府県が特に指定する地域又は場所

第1号だけを見ると「住居系の用途地域を避ければよい」と読めますが、第4号と第6号は用途地域と関係なく指定できる枠です。幹線道路の沿道が景観のために指定されていれば、商業地域でも禁止地域になりえます。用途地域の確認は必要ですが、それだけでは足りません。用途地域そのものの調べ方は用途地域の調べ方に整理しています。

第3条第2項は、広告物を表示してはならない物件も列挙しています。橋りょう、街路樹及び路傍樹、銅像及び記念碑、景観法により指定された景観重要建造物・景観重要樹木、そして「当該都道府県が特に指定する物件」です。ここでも最後の号が指定制になっています。

第3項は、公衆に対する危害を防止するために必要があるときにも禁止できるとしています。景観の観点とは別に、落下や視認の妨げといった安全の観点からの禁止が置かれている形です。

誰の条例を見るのかが自治体ごとに違う

第3条から第5条までの主語は「都道府県」です。ただし雑則に3つの特例があります。

条文誰が行うことになるか
第26条(特別区の特例)都道府県知事の権限に属する事務で政令で定めるものは、特別区では特別区の長が行う
第27条(大都市等の特例)都道府県が処理する事務で政令で定めるものは、指定都市及び中核市が処理する
第28条(景観行政団体である市町村の特例等)都道府県は条例で、第3条から第5条まで・第7条・第8条の条例の制定改廃に関する事務の全部または一部を、景観行政団体である市町村などに処理させることができる(指定都市・中核市を除く)

結果として、同じ都道府県の中でも市によって適用される条例が違うことが起こります。政令指定都市に出店するなら市の条例、隣接する町なら県の条例、という分かれ方です。多店舗展開では、店舗ごとに調べ直すことになります。

第28条は「都道府県知事は、あらかじめ、当該市町村の長に協議しなければならない」とも定めており、事務の移譲は協議のうえで行われます。どの自治体が窓口かは条文からは特定できないため、実務では出店地の市区町村に直接聞くのが最短です。

なお第29条は「この法律及びこの法律の規定に基づく条例の適用に当たつては、国民の政治活動の自由その他国民の基本的人権を不当に侵害しないように留意しなければならない」と定めています。表示の内容ではなく形状や場所を規制する制度である、という枠がここに置かれています。

違反すると撤去され、費用を請求される

第7条第1項は、条例に違反した広告物・掲出物件について、表示や設置の停止を命じ、または相当の期限を定めて除却その他必要な措置を命ずることができるとしています。

従わなかった場合が第3項です。

「都道府県知事は、第一項の規定による措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法……第三条から第六条までに定めるところに従い、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせ、その費用を義務者から徴収することができる。」(第7条第3項)

撤去されたうえで、その費用が請求されます。第8条第6項も、除却・保管・売却・公示その他の措置に要した費用を所有者等に負担させることができるとしています。

除却された広告物は第8条により保管され、返還のための公示が行われます。返還できないまま公示の日から起算して6か月を経過すると、第8条第7項により所有権は都道府県に帰属します。

罰則は法律ではなく条例側です。第34条は「第三条から第五条まで及び第七条第一項の規定に基づく条例には、罰金又は過料のみを科する規定を設けることができる」と定めています。金額も適用の条件も条例を見ないと分かりません。

はり紙・のぼり・立看板は命令なしで撤去できる

第7条第4項は、除却の手続を簡略にできる場合を定めています。対象は、はり紙、はり札等、広告旗、立看板等の4つです。条文はそれぞれを括弧書きで定義しています。

用語条文の定義(要旨)
はり札等容易に取り外すことができる状態で工作物等に取り付けられているはり札その他これに類する広告物
広告旗容易に移動させることができる状態で立てられ、又は容易に取り外すことができる状態で工作物等に取り付けられている広告の用に供する旗(これを支える台を含む。)
立看板等容易に移動させることができる状態で立てられ、又は工作物等に立て掛けられている立看板その他これに類する広告物又は掲出物件(これらを支える台を含む。)

のぼりは「広告旗」、歩道に置く立看板は「立看板等」に当たる書き方です。これらについては、はり紙は第1号に、その他は第1号・第2号のいずれにも該当する場合に限り、命令を経ずに除却できます。

条件(要旨)
第1号許可を受けなければならない場合に明らかに該当するのに許可を受けずに表示・設置されているとき、適用除外規定に明らかに該当しないのに禁止された場所に表示・設置されているとき、その他条例に明らかに違反していると認められるとき
第2号管理されずに放置されていることが明らかなとき

第2号があるため、店が管理しているのぼりが即座に撤去されるわけではありません。ただし「明らかに違反」かつ「放置が明らか」と判断されれば、事前の通知なしに無くなります。開店セールののぼりや歩道上の立看板は、常設看板より手続が軽い側にあるという点は押さえておく価値があります。

なお、除却された広告物のうちはり紙は保管の対象外です。第8条第1項ただし書が「除却し、又は除却させた広告物がはり紙である場合は、この限りでない」としています。

看板業者の登録と業務主任者

第4章は屋外広告業の登録制度です。第9条は、都道府県が条例で、区域内で屋外広告業を営もうとする者に知事の登録を受けなければならないとすることができると定めています。

第10条第2項は、その条例が従うべき基準を挙げています。

基準内容(条文の要旨)
登録の有効期間5年であること(第1号)
登録の拒否登録取消しから2年を経過しない者、営業停止期間中の者、業務主任者を選任していない者などは登録を拒否しなければならない(第2号)
業務主任者営業所ごとに選任する。登録試験機関の試験に合格した者、都道府県の講習会の課程を修了した者、これらと同等以上の知識を有するものとして条例で定める者から選ぶ(第3号)
取消し・停止不正の手段による登録、条例違反などのときは登録を取り消し、又は6か月以内の営業停止を命ずることができる(第4号)

看板の製作施工を依頼するときは、その自治体で登録を受けているかを確認できます。登録は都道府県単位の制度なので、県境をまたいだ出店では、業者がその側でも登録しているかが問題になります。

出店前に確認する順番

ここまでを踏まえると、確認は次の順になります。

順番確認すること効いてくる条文
1出店地に適用されるのは都道府県・市・区のどの条例か第26条・第27条・第28条
2その場所が禁止地域・禁止物件に当たらないか(用途地域と、都道府県が指定した地域の両方)第3条第1項第1号〜第6号・第2項
3許可が要る場合の申請先・時期・手数料第4条
4出したい看板が形状・面積・色彩の基準に収まるか第5条
5のぼり・立看板を使う予定があるなら、その扱い第7条第4項
6依頼する業者が屋外広告業の登録を受けているか第9条・第10条

1を飛ばすと、県の条例を読んで安心したのに市の条例が適用される、ということが起こります。最初に「どの条例か」を確定させてから中身に入るのが手戻りの少ない順序です。

看板の可否は立地条件の一部です。同じ図面で確認できる項目とあわせて見ておくと、候補地の全体像が早く固まります。都市計画道路にかかっていれば建てられる建物が絞られ、市街化調整区域なら出店そのものが限られます。周辺の需要側の押さえ方は立地調査の方法商圏人口の調べ方に整理しています。

出典:e-Gov法令検索「屋外広告物法」(昭和二十四年法律第百八十九号)第1条、第2条、第3条、第4条、第5条、第6条、第7条、第8条、第9条、第10条、第26条、第27条、第28条、第29条、第34条。引用は同法の条文によります。実際の規制内容は各都道府県・市区の条例および規則によるため、個別の可否は必ず出店地の所管課にご確認ください。

よくある質問

屋外広告物には、店の壁に直接書いた文字も含まれますか。

含まれます。屋外広告物法第2条第1項は屋外広告物を「常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するもの」と定義しています。「建物その他の工作物等に……表示されたもの」に当たるため、壁面に直接表示したものも対象です。のぼりやはり紙のように短期間のものも「一定の期間継続して」に読み込まれます。

屋外広告物法を読めば、出せる看板の大きさが分かりますか。

分かりません。同法は第3条で禁止できる地域・物件を、第4条で許可制にできることを、第5条で形状・面積・色彩・意匠その他の基準を定められることを規定していますが、いずれも「条例で定めるところにより」という書き方で、具体的な数値は法律側に置かれていません。面積や高さの上限、色彩の制限、許可申請の手数料はすべて条例と規則の側にあります。

誰の条例を見ればよいのですか。

原則は都道府県ですが、それだけとは限りません。屋外広告物法第26条は特別区の長が事務を行うことを、第27条は指定都市と中核市が処理することを定め、第28条は都道府県が条例で、景観行政団体である市町村などに条例の制定改廃に関する事務を処理させることができるとしています。出店地がこれらに当たる場合は、市や区の条例が適用されます。まず自治体の担当課に「この住所はどの条例か」を確認するのが確実です。

用途地域が商業地域なら、看板の規制は無いと考えてよいですか。

そうとは限りません。屋外広告物法第3条第1項が禁止地域として挙げているのは、第一種低層住居専用地域などの住居系用途地域・景観地区・風致地区・伝統的建造物群保存地区(第1号)だけではありません。第4号は「道路、鉄道、軌道、索道又はこれらに接続する地域で、良好な景観又は風致を維持するために必要があるものとして当該都道府県が指定するもの」、第6号は「当該都道府県が特に指定する地域又は場所」を挙げています。用途地域と無関係に指定されうるため、用途地域だけでは判定が終わりません。

違反した看板は、どうなりますか。

撤去され、費用を請求されることがあります。屋外広告物法第7条第1項は表示の停止や除却その他必要な措置を命ずることができるとし、第3項は命令に従わないときに行政代執行法の定めるところに従って費用を義務者から徴収できるとしています。さらに第7条第4項は、はり紙・はり札等・広告旗・立看板等について、明らかに条例に違反し管理されずに放置されていることが明らかなときは、命令を経ずに除却できると定めています。

看板の施工を頼む業者に、確認しておくことはありますか。

屋外広告業の登録の有無です。屋外広告物法第9条は、都道府県が条例で、区域内で屋外広告業を営もうとする者に知事の登録を受けなければならないとすることができると定めています。第10条第2項は、その登録の有効期間を5年とすること、営業所ごとに業務主任者を選任させることを条例の基準として定めています。業務主任者は登録試験機関の試験に合格した者か、都道府県の講習会の課程を修了した者などから選ぶ決まりです。