出店計画書や社内資料に国の人口統計を貼るとき、たいてい引っかかるのは「そもそも入手先はどこか」と「この数字を営業資料に使ってよいのか」の2点です。オープンデータという言葉は無料と同じ意味で使われがちですが、実際には公開元が書いた利用ルールがあり、そこに出典の書き方まで指定されています。
この記事では、人口のオープンデータの入手先を整理したうえで、政府統計の総合窓口(e-Stat)の利用規約の原文から、商用利用の可否・出典の書き方・適用されない例外を確認します。規約を読むと、実務でいちばん効くのは出典の2行と、統計GISが別規約になっている点だとわかります。データ入手から出店判断までの全体像は商圏分析のやり方 完全ガイドにまとめています。
人口のオープンデータの入り口はe-Stat(政府統計の総合窓口)とe-Govデータポータル(www.data.go.jp)の2つで、市区町村より細かい数字はe-Stat側にあります。e-Stat利用規約は「どなたでも……複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由に利用できます。商用利用も可能です。」と明言しており、条件は出典の記載と、加工したときの加工した旨の記載です。ただしAPI機能と統計地理情報システム(統計GIS)は別規約で、APIにはクレジット表示の義務があります。
- e-Stat利用規約は商用利用を明示的に認めている。条件は出典の記載と、加工した場合の加工した旨の記載
- 規約は「数値データ、簡単な表・グラフ等は著作権の対象ではありません」とも書いており、その範囲は本ルールの適用外
- e-Stat利用規約は政府標準利用規約(第2.0版)に準拠し、CC BY 4.0と互換と規約自身が明記している
- 適用されないものが3つ。ロゴ等/別ルールを明示したコンテンツ/API機能・統計GISなど別紙に列挙されたもの
- 統計GISの規約はエリア集計が面積按分のため「実際の値と異なる場合があります」と自ら書いている。円商圏の人口はこの前提で読む
人口のオープンデータはどこにあるか
入り口は大きく2つです。
1つめはe-Stat(政府統計の総合窓口)。国が実施した統計調査の結果が集まる場所で、国勢調査もここにあります。市区町村より細かい単位——町丁字などの小地域集計や、500mメッシュ人口——を取れるのは基本的にこちら側です。商圏分析で使う人口は、ほぼここから来ます。
2つめはe-Govデータポータル(www.data.go.jp)。サイト自身が「中央行政のオープンデータポータルです。」と名乗っており、運営はデジタル庁です。カテゴリの先頭に「人口・世帯」があり、内閣官房から防衛省まで23の提供組織を横断して探せます。統計調査の結果に限らず、各府省が公開している行政データ全般が対象なので、統計以外のデータを探すときの入口になります。
3つめとして市区町村自身のオープンデータページがあります。住民基本台帳に基づく月次の人口は、国の統計より新しい数字が自治体サイトに載っていることが多く、直近の増減を見るのに向いています。ただし定義が国勢調査と違うため、住民基本台帳人口の記事で扱っているとおり、同じ表で混ぜないほうが安全です。
商用利用は認められている
e-Stat利用規約は冒頭でこう書いています。
「当サイトで公開している情報(以下「コンテンツ」といいます。)は、どなたでも以下の1)~6)に従って、複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由に利用できます。商用利用も可能です。」
商用利用可能と明記されているので、出店計画書・提案書・自社サイトの記事に使うことに規約上の障害はありません。「複製」だけでなく「公衆送信」と「翻案」まで含まれているため、表を作り直したりグラフに描き直したりする行為も対象に入ります。
さらに規約は根拠と互換性についても書いています。「本利用ルールは、平成28年1月29日に定めたものです。本利用ルールは、政府標準利用規約(第2.0版)に準拠しています。」そして「本利用ルールは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの表示 4.0 国際……と互換性があり、本利用ルールが適用されるコンテンツはCC BYに従うことでも利用することができます。」
CC BY 4.0と互換という一文は実務で効きます。社内の資料テンプレートがCC BY表記に統一されている場合、その書式に寄せても規約違反にならないという根拠になるためです。
出典の書き方は2行で決まっている
条件の1つめは出典の記載です。規約は記載例まで示しています。
「ア コンテンツを利用する際は出典を記載してください。」として、例が2通り挙げられています。
| 場面 | 規約が示している記載例 |
|---|---|
| そのまま使う | 出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)/出典:「○○調査結果」(A省) |
| 編集・加工して使う | 「○○調査結果」(A省)を加工して作成/「○○調査結果」(A省)を基に○○株式会社作成 |
見落とされやすいのは、加工した場合に出典とは別に加工した旨を書く必要がある点です。規約の文言は「イ コンテンツを編集・加工等して利用する場合は、上記出典とは別に、編集・加工等を行ったことを記載してください。」——つまり出典1行+加工した旨1行の2行構成が求められています。
同じ項には禁止事項も置かれています。「なお、編集・加工した情報を、あたかも国(又は府省等)が作成したかのような態様で公表・利用してはいけません。」円商圏の人口のように自分で按分して出した推計値を、出典だけ書いて国の公表値のように見せるのは、ここに触れます。推計は推計と書くという当たり前の作法が、規約の側からも要求されている形です。
「数値データは著作権の対象ではない」の意味
規約の2段落目に、実務上とても重要な一文があります。
「また、数値データ、簡単な表・グラフ等は著作権の対象ではありませんので、これらについては本利用ルールの適用はなく、自由に利用できます。」
読み方に注意が要ります。これは「出典を書かなくてよい」という話ではありません。著作権法上の保護対象ではないので利用ルールの適用外だ、という法的な整理を述べているだけです。
むしろ実務では逆で、出典と年次が書いていない数字は、資料としての価値がありません。読み手が追跡できないからです。規約の適用外であることと、資料として出典を書くべきことは、まったく別の話として扱ってください。見晴でも、画面に出るすべての数値に出典と年次を明記する方針を取っています。
適用されない3つの例外
規約の「3)本利用ルールが適用されないコンテンツについて」は、3つを挙げています。
- ア 組織や特定の事業を表すシンボルマーク、ロゴ、キャラクターデザイン——省庁のロゴを資料に貼る行為はこのルールの外です
- イ 具体的かつ合理的な根拠の説明とともに、別の利用ルールの適用を明示しているコンテンツ——別ルールのものは規約の別紙に列挙されています
- 第三者が権利を持つコンテンツ。規約は「特に権利処理済であることが明示されているものを除き、利用者の責任で、当該第三者から利用の許諾を得てください。」としています
別紙に列挙されているのは、e-Statのロゴ、ミクロデータ利用のポータル(miripo・e-Micro)のロゴ、API機能の利用について、統計地理情報システムの利用について、ミクロデータ利用電子申出窓口、調査票情報提供機能の6つです。商圏分析で触れる可能性が高いのは、この中のAPI機能と統計GISの2つです。
API機能については、別規約である「政府統計の総合窓口(e-Stat)API機能利用規約」の第7条にクレジット表示の義務があります。「利用者は、本機能を利用したサービスを提供する場合には、別途定める方法により、本機能を利用している出所等を明示するものとします。」自社サービスにe-Stat APIを組み込む場合は、通常の出典表示とは別にクレジット表示が要るという理解になります。同規約は利用登録とアプリケーションIDの発行も前提にしていて(第2条・第3条)、IDの第三者への譲渡・貸与を禁じています。第8条では「短時間における大量のアクセスその他本機能の運用に支障を与える行為」を禁止事項に挙げています。
統計GISは別規約。按分の注記がある
統計地理情報システム(統計GIS)は、e-Stat上で地図と統計を重ねて見る機能で、jSTAT MAPもこの一部です。使い方はjSTAT MAPの使い方で扱っています。
こちらも別規約(統計地理情報システム機能利用規約)で、コンテンツの利用条件そのものは第6条で「本機能が提供する情報(以下「コンテンツ」という。)の利用条件等は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)利用規約」に準じるものとします。」とされています。つまり数字の使い方は本体と同じで、違うのは機能の使い方に関する条件です。
その中で、商圏分析をする人が必ず知っておくべき条文が第5条第4項です。
「本機能のエリア集計の按分処理及びリッチレポートの集計値は、基本となる小地域集計値を面積による按分処理を行っているため、実際の値と異なる場合があります。」
これは運営側が自ら書いている注記です。地図上に円を描いて出てくる人口は、小地域の値を面積で按分した推計値であって、その円の中を数え上げた実測値ではありません。人が住んでいない山林と住宅地を同じ面積比で割るため、区域の形によっては実態からずれます。
資料に載せるときは、この点を1行添えるだけで信頼性が変わります。「半径◯kmの人口は面積按分による推計値」と書いておけば、後から突き合わせた人が差の理由を追えます。円商圏そのものの限界は円商圏と実勢商圏のずれで扱っています。メッシュ単位の考え方はメッシュコードとはを参照してください。
資料に載せるときの実務手順
ここまでを踏まえると、手順は4つになります。
- どのデータをどの単位で取るかを決める。市区町村単位で足りるならe-Govデータポータルでも探せますが、商圏の議論はほぼ小地域かメッシュが要るのでe-Stat側になります
- 年次を控える。国勢調査は5年ごとで、公表までに時間差があります。最新の確定値がいつのものかは商圏人口の調べ方で扱っています
- 加工したかどうかを分ける。そのまま転記したなら出典1行、按分・集計・グラフ化をしたなら出典1行+加工した旨1行
- 推計値には「推定」と明示する。円内人口・按分値・伸び率の外挿は、いずれも実測値ではありません
この4つは、規約を守るための作法であると同時に、数字を疑われたときに一発で説明できる状態を作るための作法でもあります。出店計画書の各欄の埋め方は出店計画書の書き方にまとめています。
よくある質問
Q. 国のオープンデータを営業資料に使ってよいですか。
A. e-Stat利用規約は「どなたでも以下の1)~6)に従って、複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由に利用できます。商用利用も可能です。」と明記しています。条件は出典を記載すること、編集・加工した場合は出典とは別に加工した旨を記載すること、第三者の権利を侵害しないことなどです。ただしAPI機能や統計地理情報システムは別紙で別の規約が適用されるため、それらを使う場合はそれぞれの規約を確認してください。
Q. 出典はどう書けばよいですか。
A. 規約が記載例を示しています。そのまま使う場合は「出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)」または「出典:「○○調査結果」(A省)」です。編集・加工した場合は、上記の出典とは別に加工した旨を書きます。記載例は「「○○調査結果」(A省)を加工して作成」「「○○調査結果」(A省)を基に○○株式会社作成」です。あわせて規約は、加工した情報をあたかも国が作成したかのような態様で公表・利用してはならないとしています。
Q. データカタログサイトはどこへ行ったのですか。
A. www.data.go.jp は現在「e-Govデータポータル」という名称で運用されています。サイト自身が「中央行政のオープンデータポータルです。」と説明しており、フッタの著作権表示はデジタル庁です。カテゴリの先頭に「人口・世帯」があり、内閣官房から防衛省まで23の提供組織を横断してデータセットを探せます。統計調査の結果そのものはe-Stat側のほうが細かい単位まで揃っています。
Q. jSTAT MAPで出した円内人口はそのまま資料に書けますか。
A. 数値そのものの利用条件は統計地理情報システム機能利用規約第6条により e-Stat 利用規約に準じます。ただし同規約第5条第4項は「本機能のエリア集計の按分処理及びリッチレポートの集計値は、基本となる小地域集計値を面積による按分処理を行っているため、実際の値と異なる場合があります。」と明記しています。実測値ではなく面積按分による推計値なので、資料には推計である旨と算定方法を添えて書くことをおすすめします。
Q. e-Stat APIを自社ツールに組み込むときに追加の義務はありますか。
A. あります。API機能利用規約は第2条で利用登録を、第3条でアプリケーションIDの発行と第三者への譲渡・貸与の禁止を定めています。第7条は「利用者は、本機能を利用したサービスを提供する場合には、別途定める方法により、本機能を利用している出所等を明示するものとします。」としており、クレジット表示の義務があります。第8条では短時間における大量のアクセスなど運用に支障を与える行為を禁止しています。
Q. 数値データは著作権の対象ではないなら、出典を省いてよいですか。
A. 規約上の義務としては、数値データや簡単な表・グラフは本利用ルールの適用外とされています。ただしこれは著作権法上の整理であって、資料の作法とは別です。年次と出典が無い数字は読み手が追跡できず、出店計画書や提案書では根拠として扱えません。規約の適用の有無にかかわらず、出典と年次は書くことをおすすめします。